最終話「地球(ほし)の歌」

第十三話「地球(ほし)の歌」


ついに全てのメメント達を倒した。

世界各地のアンドロメダ達は統率を失い散り散りに去っていく。

ついに戦いが終わった、誰もがそう確信していた。

プレリュード隊の面々が機体を失い、或いは大破させた状態で各々やってくる。


「やったわね、リリィ」


京子が誇らしげに言う。


「やりましたわね、リリィさん」


椿が照れ臭そうに言う。


「やったね、リリィちゃん!」


明日香が元気いっぱいに抱き着いて来る。


「よく頑張ったわね、リリィちゃん」


由香子がリリィの頭を撫でる。


「やったね、おねぇちゃん!!」


芽衣が嬉しそうに抱き着いて来る。


「さすが私の認めた女性だ」


咲夜がリリィに拍手を送る。


こうしてプレリュード隊の面々が揃い勝利を掴み取ったリリィを、自分達を祝福した。

その時である、強烈な地震が起きた…!

地割れで裂けた地面から巨大な黒い杭の様な物が現れる。

その杭には顔が付いていた。


「あなたも新しいメメントなの?」


尋ねるリリィ。

杭は地上のプレリュード隊を見渡すと杭は少女のような声でその口を開いた。


「否、私の名前はラストメメント…メメントであってメメントではありません」


「あなたも敵なの?」


話が通じるなら平和的に話し合いたい、そう考えていたリリィだった。


「私は人類の死にも自分の死にも興味はありません」


ほっと胸を撫で下ろすリリィ。

しかし次の言葉が全てを変えた。


「だってここには地球という大きな声で泣く子がいるじゃありませんか!この子が死ぬ時、どんな歌や音楽よりも素晴らしい音を奏でるでしょう…!」


ラストメメントが衝撃的な事を言う。

リリィ達が反応する前に杭は自身の下部先端をドリルの様に回転させ地表深くを掘り進んでいく。

どうやらマントルを掘り進み地球の核を砕く狙いの様だ。

そんなことされたら本当に地球は爆発してしまう!

科学が苦手なリリィでもその位は理解出来た。

しかし今プレリュード隊で戦えるのは自分しかいない。

リリィは操縦桿を強く握ると「勇気爆裂バーン・ガーディアン!」の主題歌を歌い始めた。

そしてラストメメントに刀を構え突撃する。


「この星を守る剣となり~」


「その歌、聞き飽きましたわ」


「きゃあああああ!!!!」


ラストメメントが激しい衝撃波を飛ばしてくる。

その一撃でリリィのRSは吹っ飛ばされた。


「明日を守る盾となり~」


「だから聞き飽きたと言ったでしょう」


リリィのRSが立ち上がった所で再び吹き飛ばされる。

もう駄目かと諦めかけた時である。

少し離れた所に一人の女性が現れた。

その姿はまさにあの大河内学園長だった。


「リリィ、あなたにはもう一つ明美の残した歌がある筈よ」


「え…それって」


機内のスピーカーから音楽が流れて来る。

それは母の代表曲であり遺作でもある「光の歌」だった。

遺作であるが故に亡き母の面影を感じてしまう為今迄歌うのを避けていたのだ。


「私に…歌えるでしょうか…」


「あなたは一人じゃないでしょう?」


そうだ、怖いけど本当は優しい京子部長、嫌味だけどツンデレな椿さん、明るく人懐っこい明日香ちゃん、お茶目なの妹の芽衣、みんなのお母さん由香子さん、マザコンだけど優しい咲夜さん、そして親友のさやかちゃん…私にはこんなに沢山の仲間が付いているんだ!

負ける訳がない!


「私、いえ、私達歌います!」


「この歌は…!!!」


初めて聞く曲に驚くラストメメント。

その驚きのせいか思わず掘削作業を止めてしまう。


「光の鳥よ~、輝いて~」


プレリュード隊の面々も同じ歌を歌い出した。

その瞬間皆が金色に輝き出す。

それに呼応してか地球が共鳴し緑に輝く。

そして曲がサビに入った時、リリィのRSは二つの刀を構えた。


「歌劇流秘奥義…十字入魂!」


「まだ聞いていたかったのにー!!!」


ラストメメントは金色に輝いたリリィのRSに十文字に斬られた。

そして大爆発が起こる。

日本の特撮で学んだとどめの一欠のポーズを取るリリィ…これにてリリィの舞台は幕を閉じた。

そして…


―エデン女学院・演劇部舞台上


「ああシンデレラ!まだ舞踏会に出たいなどと戯言を言うのかい!」


「どうしても行きたいんです、お義母様!」


「ええい、あなたは掃除でもしてればいいのよ!」


「(ああ、やっぱり演劇って楽しいな!)」


椿が迫真の演技でシンデレラ役のリリィに怒声を浴びせる。

あの後どうなったのかと言うと、アンドロメダ達は完全に撤退したが、いずれまた来るであろう脅威に備えてプレリュード隊の解散は先送りとなった。

リリィは演劇部員として残り、母の様な女優を目指して今日も舞台で輝いている。

しかしもう母の背中を追うだけではない、自分なりに演劇に女優に楽しみを目標を見出したのだ。

プレリュード隊としてもそうだ。

如何なる悪がこようともみんなで力を合わせて退けてみせる…リリィはヒーローとしても燃えていた。

リリィの第二の幕は上がったばかりだ!


-完-


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歌撃少女リリィ~大女優を目指しながら歌と踊りを力に変えるロボットに乗って正義の為に戦います!~ 勇者れべる1 @yuushaaaaa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画