第12話「希望と奇跡は起きるんです!」
残るメメントは後一人、咲夜が該当メメントがいる地点に着く前になんとか機体の調整を終えたリリィは合流した。
「咲夜さん、大丈夫ですか?」
「問題無いよ、無傷だからね」
「ところで敵メメントの反応がこの辺にあるらしいんですけど、静かですねぇ」
「嵐の前の静けさって奴か―」
咲夜がそう言い掛けたその時である。
「危ない!」
「ちっ、急所を外れたか…」
リリィのRSの背後にはメメントが目前に迫っていた。
西洋の甲冑の様な騎士の様な姿で、巨大な大剣をリリィのRSに突き刺している。
AIのAKのとっさの自動操縦で急所を外したが、機体は瀕死状態だった。
そして中にいたリリィは頭から血を流し機体から脱出した。
「AK、だいじょうぶ!?」
「ふふ、駄目みたい。最後に言っておくけど私あなたの母親がベースなの」
「え!?」
突然のカミングアウトに驚くリリィ。
しかし今はそれどころではない。
「残念ながらバックアップはとってないの…これでお別れね」
「嫌だ!逝かないで!二度も母を亡くしたくない!」
大粒の涙を流すリリィ。
しかしリリィのRSは鈍い音を立てうなだれている。
「勇気爆裂よ…リリィちゃん」
そして母の自分の大好きだったロボットアニメの台詞を最後に残しリリィのRSはモノアイの光を落とした。
「喋り過ぎだ」
ジャズと名乗った最後のメメントはその大剣でリリィのRSを両断した。
その爆発にリリィが巻き込まれない様に咲夜が自分のRSで庇う。
「そんな…お母さん…」
涙を流してるリリィは放っておけないが現状はもっと放っておけない。
咲夜はジャズを奏でると曲のリズムに合わせ踊りだす。
その曲を聞いたメメントのジャズは自分の名前と同じその音楽にテンションを上げた…悪い意味で。
「いいねぇ、高ぶるねぇ!」
ジャズはその大剣を的確に咲夜のRSに振り回して来る。
咲夜は防戦一方で攻撃できないでいた…そして。
ジャズの剣撃が咲夜のRSに決まる。
咲夜は直前に緊急脱出したが機体の方は完全に大破していた。
「もう駄目ね…後はみんなを待つしか…」
「この高ぶりをどうにかしてくれよ、お嬢さん達ィ」
「ひっ!?」
怯えたリリィは必死に逃げた。
まるで狼から熊からもっと危険な何かから逃げる様に。
「お願いです、助けて下さい!私演技も歌も踊りも駄目なへっぽこ役者なんです、だから許して!」
ジャズは頭をポリポリかくとその大剣を地面に突きさした。
「あーあ、萎えたわ。どっかいけ」
まるでハエを払うかの様にリリィをしっしっと追い払う仕草をするジャズ。
その情けないリリィを咲夜は呆然と見ていた。
「リリィ、君はそれでいいのか!」
「咲夜さん…だってRS壊されちゃったんですよ?もう戦えないじゃないですか…」
「でも、だからって…君はお母さんに何とも思わないのか!?」
「母は死んだんです!」
「!?」
次の言葉が出てこない咲夜。
そして次の言葉を発したのはリリィではなくジャズだった。
「なんか気が変わったわ。やっぱり殺す」
「ひっ!?」
ジャズは大剣を大地から引き抜くとリリィに向き直った。
怯えるリリィ、そして大剣がリリィに振り下ろされようとしたその時である。
ズドーン!
空から何かが降って来た。
煙が晴れるとそこには純白と赤のRSがあった。
その機体は背部に大型の飛行ユニットと腰に二本の日本刀を携えている。
そして前面ハッチを開きまるで最初に乗ったあの時の様にリリィに乗る様に誘った。
「でも私…お母さんが望むような女優にもヒーローにもなれないよ…」
「お母さんがいなくても私達がいるでしょ!」
そこには謎のRSのモニター越しに京子が由香子が椿が明日香が芽衣がおり、そして咲夜が少し離れた所でVサインしている。
「そうだ、私には演劇部のみんなが、プレリュード隊のみんながいるんだ!ひとりじゃない!!」
リリィは墜落した新型RSに乗り込むとさっそく喉の調子を整える。
リリィはこのRSに何故か母の息吹を感じた。
「この機体はあなたのお母様、明美さんが乗っていた機体を改修したものなの!古い機体だけど出力は従来の三倍よ!」
オペレーターのさやかが意気揚々と告げる。
そうか、お母さんはこの機体に乗って戦っていたんだ…と感慨にふけるリリィ。
「お母さん、私に力を貸して!…て合言葉?」
どうやら起動にはキーワードがいるらしい。
リリィは考えを巡らす…母ならどうするか。
「合言葉はこれよ!”勇気爆裂”!!」
機体内部の機器が動き出しRSに息が吹き込まれる。
「高ぶるねぇ、高ぶるよぉ、この展開!!!」
ジャズは大剣を構えるとリリィに向かって跳躍し斬りつけて来た。
リリィも勇気爆裂バーン・ガーディアン!の主題歌を歌いつつ同様に飛ぶ。
カキン!
そして勝負は一瞬で決まった。
ジャズの大剣は折られ、ジャズはオイルを血しぶきの様に流して倒れた。
こうしてまたメメントが一体倒れた。
残りのメメントは後0体。
つまり全てのメメントが殲滅された。
これでアンドロメダは撤退していくか弱体化するだろう。
人類の勝利だ!誰もがそう確信した。
しかし…
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