第11話「オペレーション・メメントその2」
第十一話「オペレーション・メメントその2」
そこには女性型メメントであるツインテールの機械がいた。
脚部はスカートの様なフロートと化しており宙を浮いている。
そこにはアイドル声優の明日香が対峙していた。
「私はアイドルのアイ、ヨロシクね♪」
「うわぁ、自分でアイドルって言うのこんなに恥ずかしく見えるんだ…同族嫌悪」
「ちょっと無視しないでよ!」
アイがドローンを飛ばし威嚇する。
どうやらあれが彼女の武器の様だ。
「まあいいや、さっそく勝負しましょ」
二丁拳銃を構える明日香のRS。
しかしアイの反応は予想していたのと違う物だった。
「何勘違いしてるの?アイドルの勝負と言ったらダンスと歌に決まってるでしょ?」
「はぁ…」
今一状況が読み込めない明日香だったがどうやらこのメメント、本気で言ってるらしい。
明日香は呆れたようにその勝負を受ける事にした。
「観客はここにいる人間のみなさんよ。公平に審査してね♪」
そこにはアイドルのコンサートに来ていた逃げ遅れたオタク君達がいた。
当然ながら怯えて動けないでいる。
「じゃあミュージックスタート♪」
アイが選んだ曲は明日香の持ち歌「アクアプレリュード」だった。
巨体とは思えない軽快なダンスと歌を繰り広げるアイ。
アイのそれは明日香の歌とダンスを完全に模倣していた。
そして歌い終わった直後には拍手喝さいが起こっていた。
「ふーん、やるじゃない。じゃあ私は…」
明日香が選んだ曲は未発表の新曲「ブレイブプレリュード」だった。
アクアプレリュードとは対照的に勇気が湧いてくるような情熱的な歌と踊りだった。
未知の新曲故に不安だった明日香だったがアイの時以上に拍手喝さいが起こった。
「勝負はついたみたいね」
「こんな結果納得できない!!」
アイは無数のドローンを展開するとあちらこちらから全方位でレーザーの雨を降らせて来る。
しかしそれを明日香のRSはダンスの要領で軽く避け、二丁拳銃で一つずつ破壊していった。
「さあこれで最後の一機のドローンだけど、何か言う事ある?アイちゃん」
「私はアイドルなのよおおお!!!」
逆切れしたアイは最後のドローンを自爆特攻させてきた。
明日香はそれを蹴り飛ばすとアイに直撃させた。
アイの頭部目前で大爆発が起こる。
「アイドルって厳しいのね…」
自分のアイドル人生に対し感慨にふける明日香であった。
こうしてまたメメントが一体倒れた。
残りのメメントは後二体。
―
キン!キン!
椿のRSの扇が敵の巨大な腕に弾かれる。
彼の名前はカエン。
演歌を愛する巨腕の持ち主だ。
「やりますわね、デカ物さん!」
「貴様もなかなかやるな、ゲイシャ!」
「誰が芸者ですって!?」
いきなり芸者扱いされて怒った椿は再び突撃する。
しかし椿の攻撃は通じず弾き飛ばされてしまった。
「おいお前、演歌は歌えねぇのか?」
「はぁ?いきなり何言ってますの?」
「歌えねぇんだな。じゃあ死ねや」
カエンの巨大な腕が椿のRSに振り下ろされようとされていたその時である。
「演歌ならここにあるわよ!」
「うぉ!?」
突然聞こえて来た演歌にたじろぐカエン。
その視線の先にはボロボロの由香子のRSと肩を貸している芽衣のRSがいた。
「由香子さん、その傷大丈夫ですの!?」
「問題無いわ。それよりもいつぞやの合体技、試さない?」
「あれ、ですわね」
「おいおい、俺抜きで話を進めるなよ。しかし演歌のねーちゃんも満身創痍って感じだし俺を殺せそうにねーな」
「慌てなくても強烈なのをお見舞いしてやりますわ!由香子さん!」
「了解!いくわよ!」
由香子は外部スピーカーの音量を最大にすると演歌「夕暮れ」を歌い出した。
熱くも寂しくもある名曲である。
その演歌に合わせ椿が扇を開き踊りだす。
その音楽が流れるにつれ椿の扇に緑色の巨大なオーラが発生した。
そのオーラはまるで巨大な扇の様に舞いカエンに迫っていく。
「やるじゃねぇか!そういうのを待ってたのよ!」
カエンは全力を出し赤くなるとその巨大な両腕を更に巨大化し突撃していった。
そして繰り出される技は腕を回転させ突撃するいわゆる「ぐるぐるパンチ」である。
喧嘩弱者の定番の技であるがその巨大な腕と腕力により絶大な威力を生み出していた。
「優美この上なく…華麗に舞いますわ」
結論から言えば椿が勝った。
歌と踊り、二人と二基のプレリュードシステムによる相乗効果が今回の勝因だった。
しかし無傷とは言わず凄まじい負荷に耐えきれず機体がオーバーヒートしていた。
「負けたぜ…ゲイシャ…いやオイランか?」
「どちらも違いますわ」
椿の答えを聞く前にカエンは爆発四散した。
こうしてまたメメントが一体倒れた。
残りのメメントは後一体。
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