第25話 地球だけに存在する次元

 宇宙は無限大に広くても、この地球にしかないものがいろいろあることは以前に少し触れました。が、実はほかにも他の惑星には無い“もの”、いや…無い“次元”が存在しているのです。簡単に言えば…と言いたいところですが、そう簡単にご説明出来る構造ではありません。大宇宙の頂点に立つ“存在”(神々でも協力者でもなく、その神々が仕えておられる大宇宙を生み出した存在)が造られた“地球だけの次元構造”です。

 以前、“20XX年 地球爆発”に書いたお話の中で地球の存在理由をご説明しましたが、それだけ唯一無二の資源と自然が両立した美しい星“地球”は神々にとっても、もちろん人間にとっても特別な惑星だったのです。地球の誕生と共にそこに住む人間個人がその“行いにより行くべき世界”がすでに用意されている中、罪を犯さないよう人間を救うべく神様は決して難しいことではない守り事の“十戒”をモーゼを介して人々に伝えました(日本では仏教の中に“十善戒”があります)。それは一見単純明快な内容でありながらも、残念なことに人間の生まれ持った本能と知能ではそのすべてを守り通すことが叶いませんでした。

 数年前とあるドラマで何度も出てきたセリフに「神は乗り越えられる試練しか与えない」というものがありました。都合よく立ち回ったり、努力せず越えようとすれば失敗は誰の目にも見えてしまうでしょうが、目標に向かってひたすら忍耐強く努力を続けることで結果、報われる日がやって来るという法則をあえて試練と名付けたのでしょうか。

 そんな人間という生物が存在する地球だけに造られた次元とは…大きく二つの世界に分かれます。一つ目は「パラレルワールド」、二つ目は「ダークワールド」です。

現在生きている人間が存在している試練のための『現世』を基準に説明しましょう。

 まずはパラレルワールドですが、これは現世に存在している人間のコピーが生活している次元で、現在三つが現世に重なるようにして存在しています。一つ目は3年前の過去、二つ目は3日後の未来、三つ目は3年後の未来です。つまり現世と共にそれら三つがそれらの時間のズレを保持して同時進行しています。ただ、パラレルワールドの本人のコピーは現世の本人とは違う職業や生活をしています。あくまで現世の本人が主役で、パラレルワールドのコピーの本人は脇役、現世の本人が不慮の事故等で存在が消えた場合、その本人の役目を他の三つの次元の本人のコピーたちだけで人生を継続する仕組みになっています。

 『ドッペルゲンガー』と呼ばれる現象がありますが、これは他のパラレルワールドの“自分のコピーとの遭遇”を意味します。ここで必ず守らなければならない重要なルールがあります。それは“自分のコピーに絶対に声を掛けたり、会話をしてはならない”こと、その場から速やかに離れることです。お互いの次元に歪みが生じて時空の流れを変えてしまう最も危険な行為となります。それを守らずにコピーに声を掛け、もし相手が応えてしまった場合、その場(その瞬間)でお互いの存在は“初めから無”となります。つまり、周囲にいる人々はもちろん、家族、友人、恋人などすべての関係者の記憶には“最初から存在していなかった者”として抹消されてしまいます。もちろん当たり前のお話ですが戸籍謄本にも初めから存在しないので記載されるはずもありません。ただし残り二人のコピーはそれぞれのパラレルワールドで人生を継続していきます。

 次にダークワールドです。こちらは現世に重なっている次元ではなく、連立している次元です。闇は人間のための五層と人間以外(半神、悪魔、鬼、魑魅魍魎など)の“煉獄(れんごく)”と呼ばれる闇を合わせて六層存在しています。

 人間だけの闇の五層ですが、その第一層は大きく三つの次元に分かれます。一つ目は“五節の川”、ここは人間の死後、最初に行く審判の世界。生前の行いで五段階に分かれてそれぞれのつながる世界へと流される。二つ目は“凪流しの闇”、音も光も上下左右の区別もなく、自分が向いている方向や眼を開けているのかつぶっているのかさえ分からなくなっていく光ひとつ無い漆黒の闇空間をはっきりとした意識のまま永遠に漂う。三つ目は“無間地獄”、これは例えるなら想像を絶する拷問の究極の世界といえます。通常、拷問は他人の手によるものですが、ここは自らが選んだ死を死ぬ間際のリアルな苦痛をともないながら、嫌でも永遠に繰り返し続けなければならない、ある意味、“自業自得”ともいえる世界です。

 第二層から第五層はそれぞれ二次元ずつに分かれています。罪深い人間たちの魂は五度繰り返した文明により、それらに無数に送り込まれているのが現状です。

 人間以外の悪者が送り込まれる煉獄と呼ばれる層は大きく二つの次元に分かれています。一つ目は奈落の底ともいえるこれ以上は有り得ない最悪な世界。二つ目は通常の恐怖世界です。人間以外の悪者にはそれ相応の世界が用意されているのです。

 これらの多次元構造は宇宙の他の惑星には見られません。すべて地球とそこで誕生した人類やそれに関わった者たちだけのために用意された世界なのです。この小さな地球は“完成された理想の惑星”をめざした、まさに宇宙における一大プロジェクトの場であるだけにその惑星に誕生した地球人にはかなりの期待が持たれていました。が、たび重なる人間の愚かな行為は期待を裏切り続けたため、大宇宙の頂点に立つ“存在”が理想実現のために数多く用意した予備次元の多くは制裁用の闇次元が大部分を占める結果となってしまいました。

 地球が終焉を迎えるその時が訪れた時、パラレルワールドは一部の“存在”を除いた他すべて、ダークワールドはひとつ残らず“完全消失”するようです。それらの存在していた空間には原型を失った地球の断片だけが浮遊している…宇宙の歴史において“地球崩壊は人間のエゴが招いた結果”として記録が残ることでしょう。

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