第23話 ポンペイ…神話ロマン

 日本の神話に登場する木花咲耶比売(このはなさくやひめ)はとても美しく淡い小麦色の肌をした心優しい女性です。この日本にはるか昔(西暦79~80年頃)、船で海を渡って来られました。かの有名なヴェスヴィオ火山の大噴火を逃れてポンペイからこの地にやって来たのです。

 ご実家は洗濯屋さんでした。ご両親と3人暮らしで、看板娘でした。当時、お店の前には桶が並べて置いてあり、道を行き交う人々の男性たちは小用をもよおすとその桶に小便をしていきます。当時はそれが洗剤がわりになったようです。お客から預かった洗濯物はまずそれに浸しておいて、汚れを取るために揉み洗いをしてから綺麗な水で洗い流すという工程を踏んで、それから乾かしてしわを伸ばし形を整え仕上げていたようです。また、ポンペイは小麦栽培が盛んで人々の食卓には焼かれたパンが並び、皆幸せに暮らしていたのです。

 西暦79年8月24日過ぎ、それまでの火山活動が急激に活発になり、街中が大混乱に陥り、木花咲耶比売のご両親は嫌がる彼女に身の回りの最低限必要な物とパンと小麦の種を持たせて、港から無理やり船に乗せたそうです。泣きながら説得したようですが、ご両親は生まれたその地で共に果てるとかたくなに拒んだようです。その後のポンペイは歴史の通りです。街はすべて火砕流に飲み込まれ、逃げ場を失ったおおぜいの人々が亡くなりました。

 それから船は当時から理想郷のようにうたわれた東の果てにあるという島(現在の日本)をめざしました。ジブラルタル海峡を越え、南大西洋、インド洋を経由して何か月も掛けてやっとの思いで日本にたどり着いたようです。その間にも亡くなった人がいたようです。上陸した当時はすでにヤマト朝廷の存在がありましたが、野蛮な扱いは受けず、文明の格差や言葉の違いはあるものの協力的な態度で接することが出来たようです。

 木花咲耶比売の世話役を邇邇芸命(ににぎのみこと)がすることとなり、身振り手振りで意思も何とか通じるようになり、彼女が持ち込んだ麦の種は初めて日本に小麦を伝える歴史的第一歩となり、栽培が進み、食生活に多大な変化をもたらすこととなりました。そうこうするうちに美しく活発な木花咲耶比売と優しく温和な邇邇芸命は、お互いを慈しむようになり、めでたくご結婚となりました。とてもお似合いのご夫婦です。

 日本神話ではお二人とも神様です。邇邇芸命は元から神の血族で木花咲耶比売はその妻であり、日本に初めて麦と栽培を伝えた多大な貢献をされたお方です。

ちなみに木花咲耶比売に対して木花知流比売(このはなちるひめ)がおられますが、似てはおりますが全くの他人(他神)です。


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