第16話 龍
日本では平安時代頃までの人間には龍や物の怪が見えていたそうです。西洋でいうところの遠い昔に存在した“ドラゴン”とは異なり、龍は極めて神聖な存在で種類は体色とは関係なく十数種類存在します。現代人には“見えないだけ”でそれが存在していると知ったらさぞ驚かれることでしょう。
九州のとある場所に世間ではほとんど知られることなく代々続く龍派があり、その修行はかなり厳しいものと聞きました。ある時、偶然にも知人を通してその一派の方と知り合う機会がありました。その修行で得られる能力のひとつは“龍を使役してその龍の眼を使い対象を見る”ことが出来るというものです。疑うわけではないのですが、その能力を持っているとのことでしたので、真偽を確認すべく実証実験をお願いしたところ快く引き受けていただけました。
当時、その方とこちらの自宅は直線で800km以上離れていましたが、自宅の住所だけで大丈夫といわれましたので住所を伝え、さっそく自宅の間取りとこちらで指さしたものがなんであるかを電話でやり取りしたのです。すると、瞬時に言い当てただけでなく、聞いていないTVの位置や置いてあった置物の位置と、それが何かをまるでこちらに居て普通に見ているかのようにすべて当ててのけたのです。ご本人いわく、自分の使役している龍が実際にこちらまでの空間を瞬時に飛んで普通に伺っているので、自分が直接見ているのとなんら変わりないとのことでした。ただし、一派の名称やどこに本拠地があるのかは教えて頂けませんでした。世間に宣伝するような行為をおこなった場合は波紋だそうで、絶対マスコミの前に現れることはないそうです。ただ、陰陽師のような一派なのかを伺った際、“一緒にしないで欲しい”と言われてしまいました。
現代人にはほとんど見えなくなってしまった存在なのですが、龍は水に深く関わっていますので、たまに水蒸気である雲を利用してその勇姿を現す時があります。龍の姿のそれは誰でも一度や二度は見たことがあるのではないでしょうか。龍の伝説がある湖や沼などで昼間であってもデジカメを使用して水面をストロボ撮影した時など、よく見ると水面下に龍が写りこんでしまっている場合がたまにあります。
昔は自然に囲まれた山あいの谷川や湖など、清浄な水が常に満ちている場所などに龍が棲んでいました。地名に龍が付いている場所は昔は龍となんらかの関りがあったと思います。現在、その生息領域は少なくはなりましたが全国の某所にはまだ存在しているようです。ただ信じない方はもちろんですが、興味だけで見えるものでもありませんし、現代科学や“見えるものだけ”にとらわれて“想像上の架空の存在”としてしか認めないのであればそれもしかたのないことです。
長く棲みついた場所をなんらかの理由で離れることになった場合、棲んでいた水底には自分の“気の玉”をひとつ残していきます。てのひらに握れる小さなサイズの玉ですが、それは無色透明なので水と一体化していて簡単に見つけ出せるものではありません。見つける方法はただ一つ…手探りです。その玉の力は…例え地球の裏側であろうと望む“見たい景色の現在”が玉を覗くことで見ることが出来るのです。ただ、玉がある場所が滝つぼの場合ですと滝の大きさにもよりますが、水深があるでしょうし、潜水の道具も必要になってくるでしょう、滝の真下などは危険ですし、岩もごつごつしていたり、水流も乱れていて見つけ出すことは困難を極めるでしょう。命がけで至難の業…欲しくなるものほど簡単に手に入れるのは難しいということかも知れません。
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