第15話 橋場のばんば様

 270年以上の歴史を誇る国の“重要有形民俗文化財歌舞伎舞台”の開催地。毎年8月の講演には全国からたくさんの見物客が押し寄せにぎわう桧枝岐村の鎮守神社。

その細い参道を入ると左手に見えてくるのが“橋場のばんば”と呼ばれる満面の笑みをたたえたおばあさんの石像をお祀りしている祠です。

 このおばあさんは“水神さま”で子供を水難から守っているだけでなく、実は大変信仰が厚い“縁切り&縁結び”の神様でもあるのです。頭の上に大きなお椀をかぶった一風変わった姿で座っています。このばんばさまは深刻に悩む人々の味方として遠方からも訪ねてくる人々が後を絶ちません。霊験あらたかという表現が妥当でしょうか…

 人間関係、仕事関係、病気関係、金銭関係など“それらの何か(誰か)と”縁を絶(裁)ちたいとか、縁を繋ぎたいとか、誰にも相談出来ずにひとりで真剣に思い悩んでいるなら、心の休息も兼ねて一度訪ねてみるのも悪くない…そう思える場所です。

 ばんばさまにお願いがある時は事前に準備していく物があります。

① 自分の名前(個人情報なのでファーストネームだけでも大丈夫)と生年月日、願い事を黒マジックなど水に落ちないもので内側に書いたお椀をひとつ用意します。

② 裁ちハサミを1丁用意します。(縁を繋ぐか絶つかでやり方は次の通り)

 ● 縁を繋ぎたい場合(縁談を成功させたい等)…サビたハサミを用意して、ハサミ

  の刃を閉じて針金で開かないようにぐるぐる巻きにします。

 ●縁を絶ちたい場合…新しいハサミを用意してハサミは刃を閉じた状態のままで大

  丈夫です。

次は手順ですが、

① このお椀と裁ちハサミを各1つずつ用意しましたら、手提げ袋などに入れて持参します。

② お賽銭を賽銭箱に入れます。

③ お椀をばんば様の頭にかぶせます。(かぶせ切れないほど乘っていたらばんばさま

  の前か脇に置きます。

④ ばんばさまに向かい、両手を合わせて真剣な心でおごそかにお願いを伝えます。

⑤ 縁を繋ぎたい場合は、サビて針金が巻かれたハサミをばんばさまに向かって右の

 ハサミの山に乗せます。縁を切りたい場合は新しいハサミを閉じたままばんばさま

 に向かって左のハサミの山に乗せます。

⑥ もう一度ばんばさまに両手を合わせて「願いが叶いましたら必ずお礼のご挨拶に

 参ります」と伝えて去ります。

※ ここでとても大切なことはお願いが叶った際には、新たなお椀をひとつ用意して、内側に名前など必要事項を記入してから、「ありがとうございました」とひとこと付け加えます。

日を置き過ぎないように注意して必ずばんばさまのもとへ向かいます。最初にばんばさまにお礼のお賽銭を入れてきちんとお礼のご挨拶をした後で、ばんばさまに向かって右隣に並んでいるお地蔵様の祠にもお賽銭を入れてから、そこにお椀を納めてお礼を伝えます。

 面倒なようですが、願いが叶った人々の言葉を読ませていただくと真の喜びが痛いほど伝わってきます。そこには目には見えなくても確かな力の存在を感じざるを得ません。

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