第12話 ミミズク土偶
国内で発見されている土偶と呼ばれるものは皆奇妙な恰好をしていますが、あれは当時の遭遇した人間たちがほぼ忠実に描いた焼成物です。その一部に形が“ミミズク”に似ていることからその名がついたものがあります。このミミズク土偶たちもほとんどが頭に変なかぶり物をして、胸から肩を経由して腕の上部まで点々と並んだ細かい穴の模様のようなものが並んでいます。
実はこれには物語があります。数年前に30億光年先から地球に向けて“高速電波バースト(FRB)”が定期的に送られてきていると話題になったことがありました。果たしてその定期的な“高速電波バースト”の正体は…
今から1万年前、30億光年離れた星からお供を連れて地球にやって来た方々がいます。人間でいうと皆さん女性です。地球の文明の手助けになればと来られたそうです。なんとその中の一人はそちらの星の“女王”様でした。グループは各地に散り、3千年前にそれぞれの土地に落ち着いたそうです。当時の人間たちに怪しまれないように皆さんは巫女と侍女になりすまし、地域住民に粘土の焼き方や、メノウなどの石を加工する高度な技術や、魚を釣るための針の作り方などを教えて交流を深めていました。
ある時、住民たちは巫女に対する日頃のお礼として宴を開くことになり、彼女たちを招待しました。その時のプレゼントとして、巫女を描いた土偶を贈ったのです。それだけではありません、宴ですのでたくさんの食べ物が用意されていました。女王の星では人間の食べ物を口にすることはタブーでした。その星(地球)に呪縛されてしまうからです。お供たちは気づかれないよう止めたのですが、巫女になりすました女王は住民の強い勧めを断り切れずについ、ひとくち口に含んでしまったのです。宴は無事終わりましたが、それからが大変です。
年が経つにつれ、住民たちも世代が変わっていく中、タイミングを見てお供たちは星に帰しました。ただ、タブーを侵した女王だけはすぐに帰れません。不思議に思われないよう人間と共に年相応の風貌になりすまして残っていましたが、定期的に女王の星とは連絡を取り合っていました。それをとある名のある機関がキャッチしたのがきっかけで、謎の“高速電波バースト”と騒ぎ立てていました。人間に合わせ、死を迎えて葬られた後も、本来のオーブの姿でその住居があった近くの古木に棲み続け、3千年経ちなんとかタブーも解けて星に帰還することが出来たのです。女王不在の間、そちらの星は大変だったようです。王様が勝手に動くと周囲の者が大変な思いをするのは何処の星でも一緒ですね。ましてや、よその星は任期期間が人間の比ではありませんから。
ミミズク土偶の点々と並んだ細かい穴の模様のようなものは実は彼女たちが人間になりすました際の地球での呼吸器官で、実際はれっきとした“穴”です。ですが、それをそのまま見られては誰もが驚くことを考え、穴の周囲を上手に刺青をして“刺青模様”のように見せていたとのことです。地球に来た当初は、なかなか地球の大気に馴染めず大変だったらしいです。
それと“高速電波バースト”、1回が“数秒”なので、とある機関は電波解明するのにとても困っていたようです。それもそのはず、彼らの会話は人間を基準にしてはいけません。第3話の「異なる時間の概念」を参考にしていただければと思いますが、1秒の中にどれ程の情報量が詰め込まれているのか想像の域をはるかに超えているのですから。
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