本作は冬木シオリ、ナオト、キョウジ、カナタたちが喫茶店「四季」で過ごす夏の日々を描いたスピンオフ作品です。彼らの何気ないやり取りや、ちょっとした出来事の中に、ミステリーらしい雰囲気が漂っています。
キャラクターたちの掛け合いの巧みさが魅力の本作。シオリは好奇心旺盛で行動力があり、ナオトは冷静ながらもどこか抜けたところがあります。キョウジは飄々とした態度を崩さず、カナタは合理的で鋭い観察眼を持っています。そんな彼らが、喫茶店の落ち着いた空間の中で繰り広げる会話には、鋭い洞察や思わぬひらめきが含まれ、軽快ながらも読みごたえがあります。
スピンオフ作品のため、作中に大きな事件や派手な謎解きがあるわけではありません。ですが、何気ない一言の中に伏線が張られていたり、ちょっとした仕草から意外な真実が垣間見えたりと、細部に散りばめられた知的な刺激が読者を引き込みます。スピンオフ作品ならではの肩の力を抜いた雰囲気がありながら、日常ミステリーらしい空気が漂っているのが印象的です。
夏の光が差し込む喫茶店で、ゆるやかに流れる時間。けれど、その中にはさりげなく張り巡らされた推理の糸がある。そんな読後感を味わえる作品です。