第10話 「死にたい気持ち」
わたしの思春期を支配していたもの。
死ねなかったわたしは今でも敗者だ。
わたしの居場所はどこにもなかった。
学校は前に書いたとおりだし家に帰ると成績至上主義の母親からテレビは「無駄な時間」と見ることを許されず漫画も「馬鹿になる」と読むことを禁じられ、自室に行くように言われた。出てくると何をしているのかとヒステリックに怒っていた。何でも自分の思いどおりにいかないとヒステリーを起こす。いつもそうだった。
一度家族で車で出掛けたとき父親が少しスピードをあげたところ後部座席に座っていた母親が危ないと怒りだし前の座席をバンバン殴り始めた。
それを見て(ゴリラかよ)と思ったことを覚えている。
自室に早くいうと閉じ込められたわたしはどんどんうつ病を悪化させていく。
もうこの世に何も期待していなかった。
(来世は犬を飼いたい)
当時は今よりひどいアレルギー性鼻炎があり、花粉はもちろん、動物の毛も駄目だった。だから全ての望みは来世に賭けようと思い、それが唯一の希望だった。
来世にいくためには死ななければならない。
14歳だった。
将来の夢は「死ぬこと」になった。
このときから今に至るまで、将来の夢をわたしは持ったことがない。
一度母親から「将来の夢とかないの?」と訊かれたことがある。
二十代半ば。「ない。自分がこの歳まで生きてると思ってなかったから、ない」
母親は何を言っているのかと呆れていた。
まさかそう思う原因の一部を自分が作ったとはこの人は思ってもいないのだろう。
そしてわたしは死までの道筋を考えるようになっていく。
人生にタラレバはないと知っているけれど。
もしくはわたしがASDじゃなければ。うつ病にならなければ。
そして自分でも気がつかなかったうつ病の初期に誰かが気付いて医療に繋げていてくれれば。
こうはならなかったら。
叶わない夢でしかない。
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