第9話 違いに気付いたその後

周りと自分の違いにはっきり気付いたわたしはそこからは全てのことに慎重になった。

浮いて見えないか、同じに見えるか。

もちろん独り言なんて人前では絶対に言わず、休み時間は誰かと遊ぶようにした。

しかしそれさえ「いつも同じグループではなく、違うグループとも一緒にいる」と陰口を叩かれていたことをあとからこっそり教えられた。

そしてわたしも誰かの悪口に加わり、様々な話題に同調するようにした。

自分が振る舞いたいように振る舞うことはせず、自分を壁の中に閉じ込めて、消そうとした。

それは多少は功を奏したのだがやはり完全にうまくはいかず、一部の人からとんでもなく嫌われることが多かった。


もちろんこんなことをして毎日が楽しい訳がない。学校は地獄だった。

係の仕事などは半ば強制的に割り振られ、人前で喋らなければならない場面も出てきたがどうしても出られずなぜやらないのかクラスの多くの人から糾弾を受けたこともあった。

発達障害という言葉がなかった頃、わたしのやっていることは定型発達の人たちから見ればただ怠けているとしか見られなかった。


親には学校に行きたくないと何度も訴えたが聞いてもらえなかった。

わたしの親は「学校だけは行かなければならない」という強い思い込みを持っており、それが親の愛だと思っていた。

もう救いはなかった。


そしてわたしはなるべくしてうつ病になった。

ただ病院には誰も連れていってくれなかったし自分でもうつ病というものを知らなかったので明らかにこの頃から症状は出ていたが診断はついていない。

仕事上の問題でうつ病になったのなら(可能かどうかは別として)その仕事から離れられたら寛解の見込みもあったかもしれない。でもうつ病の原因がASDにある以上、治る見込みなどなかった。

何か起こる度にうつ病を少しずつ悪化させながら生きていくしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る