第8話 わたしは、違う 小学校中学年 その1

小学校低学年エピソードもまだあるけれど今回は少しだけその辺を飛ばして。


小学校4年生。

そのときの担任の先生は結構厳しくてしかも成績のいい児童をあからさまにひいきする人だった。そしてわたしは少しだけ成績が良かったためひいきされる側に置かれていた。明らかに不平等で歪んだクラス。

あるとき席替えがあった。

隣とその前の席になったのは今までほとんど話したこともない男子。

この2人がつるんでわたしをからかってくるようになったのだ。

嫌だったけれどあの担任の先生に言いつけても解決してくれるとも思えなかったしおとなしく次の席替えを待とうと思った。


でも、ある日。

国語の授業で思い出の写真を持ってきてそれについての作文を書くように言われた。

わたしは混乱した。

母親は写真をすごくきれいにアルバムに整理していてそれをいつも絶対に触らないように言っていたからそこから剥がして1枚持っていくなんて言ったらきっと何か言われる。

「どうしよう…」

思わず、声が出ていた。今になって思えばこれも発達障害の特性でしかないのだけれど。

「写真剥がすなんて言ったら怒られそう。アルバムごと持ってこないといけないかも…。そしたらあんなの重すぎる。どうしよう…」

わたしの脳内は想定外のことが起きるといつも簡単にパニックになる。このときも周りが見えなくなっていた。

突然、隣の席の男子児童が笑い出した。

「こいつなんか独り言言ってる!」

大声だったのでクラスのみんながわたしに注目した。

「変な奴!」

そこに笑いが起きた。


わたしの世界の全てが変わった瞬間だった。


(わたしは、違う)

そこに透明な、でも絶対消えない壁があった。

全ての出来事は本当はその壁の向こうだった。

そして壁の中にはわたししかいない。

(なんで)

発達障害という言葉がなかった時代、理由がわからなかった。

そしてそのときのわたしをみんなただ笑うだけで誰も助けてくれなかった。

どうすればいいのか、対処法さえ知らず、いつも嫌なことばかり言われていたことを思い出し、涙が溢れた。


ただあとから知ったのだがそのときの男子児童は知的と身体の障害を持ったお兄さんがいたらしい。

彼が人と違うわたしのことをどんな気持ちでからかっていたのかはわからない。


結局写真の件は学校でどうしても必要と言ったら簡単にアルバムから出していいと言われたので完全な杞憂だった。

先走って考えすぎてパニックになるのは今でも同じだ。


そして今もずっとその壁はわたしと外の世界を隔てたまま。

内側から出られなくなった。


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