師匠と弟子は壁に「どちらかが相手の耳にキスをすれば出口が現れます」と書いた紙が張られた部屋に閉じ込められました。
投稿 12/20 0:25頃
師匠と弟子は壁に「どちらかが相手の耳にキスをすれば出口が現れます」と書いた紙が張られた部屋に閉じ込められました。
#shindanmaker
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「ん……」
狭い部屋でカインが目を覚ますと、張り紙が目に入った。
「なんだよ、これ……」
意味がわからずによく見ようと腰を浮かしかけると、背後についた手があたたかい何かに触れた。
「?」
振り向くと、そこにはシュテルが、細い寝息をたてて横たわっていた。
つまり……
「……っ!」
カインは思わず赤くなって叫びそうになった。張り紙は、シュテルかカインのどちらかが相手の耳にキスをするよう指示しているのだ!……そんなの、どっちがどっちにしたって、恥ずかしいに決まっている。
幸いシュテルはまだ眠っている。今のうちに、脱出方法を見つければ、キスなどしなくていいのだ。
「やってやるぜ!」
シュテルが目覚める前に、脱出方法を!
見つけられなかった。
「……そういうことですか」
目覚めたシュテルは、満身創痍のカインと、涼しげな顔の張り紙を見比べて微笑した。
「カイン」
手招きされ、カインがシュテルに近づくと、なにか柔らかいものがふわりと耳朶に触れた。
そして、地響きとともに、先程まで何もなかった壁に扉が現れる。
「全く、こんなくだらない部屋、どうせボルドあたりの悪戯でしょう。たまにはキツく叱ることも必要ですね」
近所に住む変人魔道士に疑いの目を向けながら、シュテルはさっさと部屋を出ていった。
あとに残されたカインは、まだ唇の感触の残る耳朶を押さえながら、しばらく立ち尽くすことしか出来なかった。
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