師匠と弟子は壁に「どちらかが相手の耳にキスをすれば出口が現れます」と書いた紙が張られた部屋に閉じ込められました。

投稿 12/20 0:25頃



師匠と弟子は壁に「どちらかが相手の耳にキスをすれば出口が現れます」と書いた紙が張られた部屋に閉じ込められました。


#shindanmaker

https://shindanmaker.com/666064


「ん……」

狭い部屋でカインが目を覚ますと、張り紙が目に入った。

「なんだよ、これ……」

意味がわからずによく見ようと腰を浮かしかけると、背後についた手があたたかい何かに触れた。

「?」

振り向くと、そこにはシュテルが、細い寝息をたてて横たわっていた。

つまり……

「……っ!」

カインは思わず赤くなって叫びそうになった。張り紙は、シュテルかカインのどちらかが相手の耳にキスをするよう指示しているのだ!……そんなの、どっちがどっちにしたって、恥ずかしいに決まっている。

幸いシュテルはまだ眠っている。今のうちに、脱出方法を見つければ、キスなどしなくていいのだ。

「やってやるぜ!」

シュテルが目覚める前に、脱出方法を!


見つけられなかった。

「……そういうことですか」

目覚めたシュテルは、満身創痍のカインと、涼しげな顔の張り紙を見比べて微笑した。

「カイン」

手招きされ、カインがシュテルに近づくと、なにか柔らかいものがふわりと耳朶に触れた。

そして、地響きとともに、先程まで何もなかった壁に扉が現れる。

「全く、こんなくだらない部屋、どうせボルドあたりの悪戯でしょう。たまにはキツく叱ることも必要ですね」

近所に住む変人魔道士に疑いの目を向けながら、シュテルはさっさと部屋を出ていった。

あとに残されたカインは、まだ唇の感触の残る耳朶を押さえながら、しばらく立ち尽くすことしか出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る