雲に月がかかる その2

2024/2/1 6:20:10

#雲に月がかかる



むかしむかし

空には月の女神がいました。

女神はとても美しかったので、草も木も女神の輝きを遮ることは出来ませんでした。

そうこうするうちに、女神は美しさを鼻にかけ、性格が悪くなってしまいました。

心を痛めたのが雲でした。

雲は古き昔から、女神とともに空に在り、永き時を過ごした友人でした。

雲は女神に、他の者が彼女の前に出ることを許すよう頼みました。

しかし女神は聞く耳を持ちませんでした。

そこで雲は一計を案じました。

女神は池に映った己の姿を眺めるのが好きでした。

毎日池を眺めては、己の美しさを再確認していました。

その夜も女神は天高く昇ると、池に映った己の姿を眺めようとしました。

その時雲は、一雫の涙を流しました。

涙は雨粒となって地上に降り注ぎ、水面を揺らしました。

歪んだ翳を己の姿と勘違いした女神は、そそくさと雲の後ろに隠れてしまいました。

その日から、草も木も、もちろん雲も、月にかかることが許されるようになったのです。


そんなことがなければ、今でも、雲にかかる月を見ることができたかも知れませんね。

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