第135話 入って行った・・・
これも、前話に引き続き、息子から聞いたお話です。
と言っても、続編って訳じゃなく、また別のお話なんです。
彼は、先程の硝子に張り付いた男の姿を見た部屋から、他の部屋に移動すべく、廊下を歩いていました。
取り敢えず見えたものは彼に悪さをする訳でもなかったので、ほっとはしていました。
まあなんと言うか、この手の経験をいくつかしていると、怖いと言うよりも面倒と言う気持ちの方が先行しがちなんですよね。
相手は恐らく承認欲求が強い訳で、気付いてくれる者が入れば、自分の思いを叶えてもらおうと縋りついて来るのですが、こっちはそちら系の専門家ではないので、どうする事も出来ませんから。
やれる事は無いので、大抵はその事を伝えて立ち去ってもらいます。
私の場合、時々物理的拒否行動をとるという無茶をする場合がありますが。
息子は相手が縋りついてこなかったことに安堵しながら、次の仕事に向かっていました。
と、其の時。
彼の目の前を妙なものが過ぎります。
ピンポン玉くらいの大きさの白い球体。
それはふわふわと中空を漂いながら、ある部屋の前に来ると、閉められたドアの隙間から中に入って行ったんです。
オーブです。
私も時々見ますけど。
よく埃の見間違えだとか色々言われますが、実際に見た事がある私からすれば、肉眼で見る限りは埃や虫どころの大きさではないです。カメラでとらえた画像については、その場合もあるかもですが。
問題は、オーブが消えた部屋なんですが、そこって、体調の悪い方の避難所の様な所らしいです。
はやり病対策に一環として、職場で設けたスペースのようです。
その部屋に入って行ったというのは、何か意味があるんでしょうね。
因みに、その部屋で何かあったとかいう話はないようなので、そこに巣食っているのではなさそうです。
結局何なのかは分からずじまい。
彼の話では、その後は何も見ていないとの事ですので、浮遊霊か何かその類のものなんだろうなとは思います。
あくまでも、私の推測ですけど――否、ちょっと待った!
もしかして。
ひょっとしたら、だけど。
これって、さっき窓に張り付いていた男なのかも。
まあ、確証はないですが……可能性は零ではない。
知らんけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます