第133話 写ってしまった・・・

 これは、数年前に私の妻が体験した不思議な出来事です。

 その日、私と妻は会員制の大きな外資系スーパーに買い物に出かけていました。

 其のスーパーは家から離れていますので、そうそう何回も来る事は無いのですが、それ故に、途中何か面白い所があれば寄って行こうと言う事になりました。

 そうなれば、やっぱり行先はパワースポットですよね。

 妻もまあ好きな方なので、近くにパワースポットが無いか、ネットで検索してみると――ありました。

 お寺です。

 普段、私が参拝するのは圧倒的に神社が多いので、また違う雰囲気を楽しめそうです。

 お寺って、何だか温かいんですよね。私と気のそぐわない神社やパワースポットで感じる気怠い温かさとは違う、ほっこりした温かさを感じるんです。

 勿論、清廉された厳粛な雰囲気も感じるんですが。

 因みに、お寺で拒絶的な感覚に捉われる事は余りないですね。たまに違和感を感じる事はありますが・・・。

 その日、訪れたお寺は心地良い気で私達を受け入れて下さいました。山村の奥に追わすそのお寺は、濃厚な森の緑に包まれ、ひっそりとした佇まいでした。

 ですが、参拝客の方は結構いらっしゃり、お昼時と言う事もあってか、すぐそばの土産物屋の食堂は人で溢れていました。

 私達はスーパーのフードコートで早々に昼食を済ませて来たので、土産物屋の前を通り過ぎ、お寺の本堂へと向かいます。

 果てしなく? 続く参道の階段を上り、漸く到着。

 思ったより広い境内です。

 本堂でのお参りを済ませ、更に上にある五重塔を目指します。

 森の中を貫き続く階段は、木々の枝葉の間から木漏れ日が差し、厳粛な趣の中に幻想的な光のコントラストが合いまった不思議な空間を醸しています。

 そして、その先に聳える五重塔は、光と影のおりなす神秘的なシルエットを空間に刻み、重厚感のある存在で私達を出迎えて下さいました。

 私達は参道や五重塔周辺で何枚か写真を撮らせて頂き、更にその上の開けた場所に祀られておりました幾つもの仏像に手を合わせた後、帰路につきました。

「これ、何? 」

 帰宅して、スマホで撮りまくったお寺の写真を見ていた妻が、驚いた表情で私にそれを見せてきました。

 其れは、五重塔に向かう参道で撮った画像でした。

 木漏れ日が綺麗な木々の間を見上げる様に取った写真に幾何学的な赤い光の模様が写っていたんです。

 其れはまるで、菱形にカットしたステンドグラスをバランスよく並べた様な不思議な画像でした。

「これ、何枚か写っているよ」

 妻がそう言ってまた違う画像を私に見せてきました。

 確かに、同じ様な紋様が写った画像が何枚かあります。

「何だろうね、これ」

 私は首を傾げ乍ら、画像を確認しました。

「これって・・・」

 一枚の画像に私の眼が止まりました。

 紅い光の写ったものとはまた別の画像です。

 それは、参道の途中に聳え立っていた木の幹を写したものでした。

 逆光のせいか、木は黒いシルエットになっていました。

 問題は、その画像の上の方。

 金色の光の線が写っているんです。

 私が写真を撮る際に、よく目にしているフレアやゴーストとはまた違うものでした。

 否、其れよりも、もっと凄いものが・・・。

 木の幹の中央から下の方に掛けて、うっすらと白い何かが写っているんです。

 それは写した木の幹の半分ぐらいに太さで、しかもその幹に巻き付く様な感じでうつっていました。

 巨大な白蛇でした。

 それは、首をもたげ、じっと撮影者――妻を見つめている様な構図でした。

 白蛇は微笑んでいるかのような温和な表情を湛え、優し気な眼でこちらを見つめていました。

 画像から感じる気は温かく、清廉されており、畏怖感は全くありません。

 白蛇は弁天様の使いと言われています。

 ひょっとしたら、妻は弁天様からの御加護を授かっているのかも知れません。

  


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