第127話 金色の光
これは、つい最近私が体験した話です。
その日、私は息子と一緒にいつも参拝している神社にお参りに行きました。
私も息子も、ここの神社と波長が合っており、訪れた途端に体がふっと軽くなるんですよね。
その日も、鳥居をくぐった途端に両肩にのしかかっていた重圧がふっと解け、身体が軽くなりました。息子も同じ事を言ってましたね。
二人とも、日々の生活の中で、色々と背負い込んでいたようです。
手水舎で両手と口を清め、拝殿に向かいます。
月初めの、しかも一日の日曜日と言う事もあってか、参拝客の車で駐車場はいっぱいになっていたのですが、何故か拝殿の前は人気がなく、ぽっかりと空間が空いています。
私達は拝殿に二礼二拍し、日頃の感謝とこれからの自分の生き様についての決意を報じました。
其の時、意識がざわつくのを感じました。
何だろう、この感覚。
自分の、思いを、熱意を、神々が受け止めて下さっているような感じがする。
全ての思いを語りなさい――そんなイメージが、不意に思考を過ぎりました。
一通りの思いと意思を問絶え終わった頃、背後に参拝者の気配を感じました。
一礼し、私達は拝殿を離れました。
その後、境内に分祠されている他の拝殿にもご挨拶に向かいます。
他の祠に御参りした時、先程主祭神に参拝した時と同じ様な感覚が私を捉えました。
それは、私の頭の中に熱く語り掛けて来ると、言葉を紡ぎ始めました。
思いを残さず言ってみなさい――漠然とですが、そんな感じの言霊が、私の思考に響きます。
私はこちらでもありとあらゆる思いと夢と希望を言霊に紡ぎ、神前に奉じました。
次に、その隣の御社に御参りしました。
心地良い風が私を背後から包み込みます。
心配いらない――私にそう語り掛けて下さっているかのようでした。
私と入れ替わりに、今度は息子が拝殿に手を合わせます。
私は鳥居に向かって少し歩み、そして何気に振り替えりました。
刹那。
その拝殿の軒下を、金色の波状の光が音も無く移動したのです。
その光は、御社の軒下を滑るように流れ、隣の祠の方へ消えていきました。
「今の分かった? 」
私は参拝を終えた息子に声を掛けました。
「いや・・・分からなかった」
と、彼からは少々歯切れの悪い返事が返ってきました。
この時、私は未だ神々の啓示に気付いていませんでした。
息子だけが知っていたのです。
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