第125話 リアウインドウの悪夢
これは、三年前に私が目撃したお話です。
その日の朝も、いつも通りに目覚めると手早く朝食をとり、会社に向かいました。
この朝のスタートが五分違うだけで、道路事情が大きく変わってきます。
住宅街を抜け、交通量の多い国道に合流するのですが、ほんのわずかなタイミングの違いで、信号に全て引っ掛かったりするわけです。
そうなれば、会社につくのはぎりぎり。
だったらもっと早く家を出ればいいいのに・・・そりゃそうなんですけど。
その日は、割とスムーズに車は進んでいました。
たまに路停している大型トラックがいたりしているんですが、それもなく。
其れでも時折信号に捕まりますが、それはまあ仕方が無いです。実際、ノンストップで会社に辿り着くのは不可能ですから。
とうとう、信号に捕まりました。減速して停車。前の車に目を向けます。
黒い軽自動車。私は車に疎いので、車種は何か分かりません。恥ずかしい話ですが、自分の車のグレードすら分かっていません。流石に車種は分かっていますけど。
ぼんやりと前の車を見ているうちに、ある事に気付きました。
車の後ろのウインドウに、白い顔が映っているんです。
四角っぽい顔立ち。中年の男性の様です。
後部座席の人が、振り向いてこちらを見ている?
違う。
顔は、身体を捩って背後に向けていると言うよりも、真正面から対峙しているような感じで見えている。
その顔には感情が籠っておらず、まるでデスマスク。
それに、明らかに常人よりも大きい。
ひょっとして、あれって・・・。
否、簡単に決め付けるのは良くない。
実は、空の雲が映っているだけなのかもしれない。
以前、同じパターンで、よく見れば空に浮かぶ雲だったって事があったので。
でも、今日は雲一つない晴天。
試しにちょいと空に目線を向けても、そんな雲はない。
じゃあ。あれは・・・。
信号が青になり、車が動きだします。
するとその顔は、悲しそうな表情を浮かべると、吸い込まれるように消え失せた。
やっぱり、か。
朝から嫌なものを見てしまった。
車とその顔の人との因果関係は分からないし、調べようがない。
脳裏に焼き付いた、あの悲しげな表情・・・。
あの時、私に何かを訴えかけていたのだろうか。
ただの目の錯覚だったらいいのですが。
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