第115話 きゃっ きゃっ
これは、職場の女子従業員からいただいたたお話です。
彼女には、家を出て遠方の都市部で働いているお兄さんがいらっしゃるそうで、その方の体験談を聞かせて頂きました。
仮に、彼女のお兄さんをAさんとしましよう。
Aさんは就職をきっかけに実家から離れて暮らすことになりました。
新生活に希望と不安を抱きながらの一人での生活が始まった訳です。
ある日の夜、布団に潜り込み、寝ようとした時でした。
突然、身体が動かなくなったんです。
金縛り? それも、初めての体験。
妙なものが聞こえる。
何だろう・・・。
足音だ。
小さな子供が走り回っている足音と声がする。
おかしい。
深夜なのに在り得ない・・・。
漸く、金縛りが解ける。
同時に、足音も声も聞こえなくなる。
何だったんだ、今のは・・・。
Aさんは恐怖におののきながらも困惑していました。
彼には霊感は無く、こんな経験は初めてだったのです。
しかも、彼はその後も行くとどなく同じ体験をする事に。
Aさんには、何となく心当たりがありました。
アパート自体は事故物件ではなかったのですが、立地条件にちょっと引っ掛かる事があったのです。
アパートの前が墓地になっていました。しかもその隣が保育園だったんです。
生と死、陽と陰・・・ある意味で正反対な気を孕んだ存在が、隣接していたのです。
ひょっとしたら、墓地に眠る幼い子供の霊が、夜な夜な保育園を訪れては、遊具で遊んでいたのかもしれない。
Aさんはそう思い、祖母が信仰するお寺の御上人様から御札を授与していただいて、部屋にお祀りしたそうです。
すると、其れを機に怪奇現象はぴたりと止まり、金縛りにもあわなくなったとの事。
とは言え、流石にそのまま住み続ける気にはなれなかったのでしょう。早々に引っ越されたのだそうです。
アパートのそばに墓地があったから、不思議な体験をする事になった――このお話を聞いた時、其れだけが原因じゃないなと思いました。
実際、近所の新興住宅地何かでも、墓地を囲む様に新しい家が建ち並んでいる所も多々ありますし、地方によっては、古い家だと家の敷地内に墳墓が立っている所もありますから。
例え、夜にそのそばを通ったとて、霊現象に会う訳でもなく、何も感じない事が多いです。
そこに眠る方々は、ちゃんと供養されており、成仏されているでしょうから。
恐らくですが、Aさんがお住まいになっていたお部屋に、霊道があったんじゃないかと思います。
その霊道を通って、彷徨っている霊達――特に子供達の霊が、昼間、園児たちが楽しく遊んでいる保育園に魅かれて引き込まれていったのではないでしょうか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます