第113話 違和感

 これもまた、息子と関東地方の某県に鎮座する神社を参拝した時のお話です。

 というより、その前の話の続きです。

 話を小出しして話数を増やしている様に思われてしまいがちですが、一話をなるべく千文字前後、長くても二千文字程度に収めようとしている手前。こうなってしまいます。それに、それぞれの話が独立したシチュエーションだったりするので。

 といいながらも、正直のところ、話数を増やそうとしている目論見も無きしもあらず。御勘弁を。

 さて。この話は、最初の二つに比べると、ちょっとジャンル的に異なるかもです。

 まあ、怖くは無いか。

 でも、私的には不思議な話でした。

 この日、奥宮と山頂にある祠を参拝した私達は、裏参道をゆっくりと下っていました。いつもなら、我先にと下っていたんですけどね。

 その途中、私は息子に声を掛け、わき道にそれました。

 その先には、小さな祠がいくつも並んでいるんです。

 その存在は、今までも気付いてはいましたが、いつも立ち寄る事無く通り過ぎていました。

 ところが、前に訪れた時、何となく気になってお参りするようになったんです。

 何と言う神様がお祀りされているのか、私にはさっぱり分かりませんでした。

 祠のそばの碑には、御祭神の御名前が刻まれているのですが、難しくて私には読めません。

 それでも気になってからはお参りしているのですが、何となく違和感を感じるんです。日々の感謝を奉じ、お願いことを述べるものの、何かがしっくりこない。

 それこそ、言葉が悪いかもですが、スルーされているような感じ。

 ただの気のせいとは思うのですが。

 息子は祠の文字をじっと見つめながら、携帯をかまっています。どうやら、ネットで検索している模様。

「お父さん、わかったよ。これって御嶽信仰のものみたい。死後、魂が御嶽山に帰れるようにと願いを込めて建てたものらしいよ」

 息子の回答に愕然としつつ、何処か腑に落ちない。

 それでも、違和感の原因はそれなのかと無理矢理自分に言い聞かせました。

 私は、今までジャンルの異なるお願いをしていた事を祠の前で謝罪しました。

 数日後、私はふと霊神様の事が気になり、調べ直してみました。

 真実が分かりました。

 先日、参道の端で見た霊神様は、どうやら御嶽信仰のものとは違い、高天原にいらっしゃる天上神、至上神の事の様です。

 どちらにせよ、そうなれば天照大神様同様に、個人的なお願いは恐らくお門違いと言うことでしょう。

 全ての人々の幸せを祈るべき神前で、個人的なお願いは、神様にとっても確かに違和感を感じざるを得ないですよね。

 お前、祈願する内容が違うぞ――あの時感じた違和感は、御祭神が私をそう窘めていたからなのかもしれません。

 

 


 

 


 


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