第112話 今の、見た?
これも、先日息子と関東の某県に鎮座する神社に参拝した時のお話です。
私と息子はつい先ほどの白装束の人影について、歩きながら考察をしていました。
白装束の人影については、このお話の一つ前のお話に詳しく書いていますので、そちらをご参照ください。
因みに、息子にはその姿が見えているんですが、私には見えませんでした。恐らくはその主が発しただろう、熱い気の存在を感じ取るので精一杯でした。
やはり、スペックの差なのでしょう。口惜しいですが、こればかりは仕方がありません。
白装束の人影については、恐らく天狗様かもという結論が濃厚でした。
息子も顔までは見られなかったようなので、なんとも言い難いのですよね。この答えに導かれたのは、あくまでもこの地に天狗様にかかわる伝承があるから故にですから。
そうしているうちに、もう少しで奥宮と言う地点に差し掛かりました。
この辺りで、昔、不思議な蛇を見たんです。全身真っ黒なんですが、顔の両側面に白い斑点が一つずつあるんです。まだ幼体の様で、身体は細く、鉛筆くらいの太さでした。それでも、全長は三十センチ弱はあったかと思います。
その蛇は、私の存在に気付くと、しばらくじっとしていましたが、やがて路肩の茂みへと消えて行きました。
この参道で蛇を見たのは、今のところその一回だけです。
ふと、其の時の事を思い出しながら歩いていると。
不意に、足元を何かが動きました。
思わず歩みを停めます。
蛇?
じゃない。
私の目に映ったのは、半透明の楕円形のもの。大きさは大人の拳くらいでした。
しかもそれは、音一つ立てる事無く、私の爪先すれすれを横切って行ったのです。
「今の、見た? 」
私の後ろを歩いていた息子が、そう声を掛けてきました。
どうやら、息子にも見えていたようです。
「うん、見えた」
私は頷きました。驚きの余り、声が少し上ずっています。
「蛇だったよね? 」
息子の問い掛けに、私は思わず振り向き、彼の顔を覗き込みました。
「蛇じゃなかったよ。俺が見たのは半透明の楕円形のやつ」
「僕が見たのは細長い蛇のしっぽみたいなやつだった」
息子の答えに愕然としました。
恐らく息子も私と同じものを見ている様なのですが、彼の方がより具体的に見えているようです。
「蛇の神様? 」
息子は首を傾げます。
「かもね」
と、頷く私。
しかしながら、先程の白装束の人影といい、スペックの違いをまざまざと見せつけられた出来事でした。
それにしても。
私達親子が揃うと、こうも不思議な事が起きてしまうとは・・・これでは揃って家には帰れないです。
私達が家を離れてから、我が家では何も変な事は起きていないそうなので。
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