第100話 厄払い

 これは、つい最近私と息子が体験したお話です。

 ふと気が付けば、息子が前厄で私が本厄。

 私は前の厄年の時、前後の厄を含めて入院二回に乗っていた車を二週間のうちに二回ぶつけて廃車にしてしまったと言う経緯の持ち主なので、流石にちょっとヤバいかもと怯えた日々を送っていましたら、人間ドックで色々引っ掛ってしまいました。

 厄年だからと言うよりも、日頃の不摂生が成した結果なんでしょうけど。

 ともわれ、いい機会なので二人して厄払いをする事になり、私は早速押しの神社に予約を入れました。

 当日、社務所を訪れると、宮司さんの奥さんに別室の受付に向かうよう案内頂き、私達は拝殿とは別当の控えの間の様な所に向かいました。

 私達が訪れると、宮司さんが祈祷に必要な事項を記載する用紙を用意して下さっており、詳細な説明を頂きながら記入していきます。

 いよいよ拝殿へ。

 中に入ると、驚きました。

 意外に奥行きがあるのです。

 正面から拝んでいる時には、そう感じなかったのですが、改めて外から見た時の風景を思い出してみると、確かに納得かもです。

 神社には、銭洗いの滝が流れ込む池があるんですが、拝殿はこの池をまたぐ構造になっており、中から見ると、この部分がちょうど橋の様になっているんです。

 その分、尚更奥まった感じになっているんですね。

 宮司さんに勧められ、私達は椅子に腰かけました。

 いよいよ祈祷の始まりです。

 宮司さんは祓い串で清めると、朗々と祝詞を紡ぎ始めました。

 透きとおった厳粛な空気が、更に清廉さを増していきます。

 私はじっと奥にある壇を見つめていました。

 不意に、祭壇の上の辺りを、半透明の玉のようなものが飛びました。

 其れも、立て続けに二つ。

 ほんの一瞬でしたが、やや紫色を帯びていたような気がします。

 ここの神社の主な御祭神は、二柱の女神様なので、ひょっとしたら・・・。

 余り祭壇をガン見するのも失礼に当たるかと思い、私は半眼で頭を垂れました。

 祈祷は滞りなく進み、無事終了。

 不思議な事に、身体がものすごく軽いんです。

 しょっていた厄が落ちたのでしょう。

 私達は神様と宮司さんに礼を告げ、拝殿を出ました。

 私は早速、息子に祭壇のそばを飛んだ光の珠の話をしました。

 が、彼は見ていない様子。

 息子曰く、祭壇を見るのは神様に失礼かと思い、そもそもそちらは見ていないとの事。

 ただ、祈祷の間、身体がずっと左右に揺れていたそうです。

 勿論、自分の意志とは関係なく。

 其れと、彼も私と同じく身体が軽くなったと言っていました。

 これで何とか無事過ごせそうです。

 

 

 

 

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