第95話 きらり
これは、数年前に私が体験したお話です。
決して怖くはないです。どっちかと言うと、不思議な話になります。
その日、私は関東の某県にある神社を参拝していました。
この神社は、実は今までにも何回かお話に登場してきています。
海に近い山中に建立された神社で、境内には、主祭神以外にもたくさんの神様がお祀りされている所です。ここまで書いちゃうと分かる方には分かってしますかもですね。
この日は確か、初めて参拝した日だったのを覚えています。
拝殿を参拝後、表参道経由で奥宮、山頂の御神体と参拝し、裏参道から下って降りるコースです。
岩だらけだったり、木々の根がうねうねと張り出していたり、踏み固められた赤土むき出しの斜面を登らなけりゃならないのですが、筑波山登山を何回か経験していますので、それ程でもなかったです。
拝殿の格式ある厳かな神気に触れ、表参道をを進み、奥宮の荘厳な雰囲気に魂が震えるのを覚えました。
そして山頂へ。
山頂から剣の様に突き出たご神体にご挨拶した後、そのそばの岩の上から大きく広がる風景を携帯のカメラに収めました。
山頂での参拝後、下山は裏参道へと進路を取ります。
道の状態は、表参道よりも良い感じ。
其れでも漬物石級の石がごろごろしているので、油断していると足を取られます。
それに、下り初めは結構な急斜面もありますし。
急斜面って、上る時に下から見上げるより、下る時に上から見下ろす方が恐怖ですよね。
最近は行っていませんが、昔、スキー場とかでこういう事がよくありました。上級者コースを下から見た時と上から見下ろした時で斜面の傾斜角度の感じが違うんです。
大したことないなと思って、いざリフトで上まで上がってみると、その角度の凄まじさを実感し、恐怖に蒼褪めた事が多々あります。そんな時は無理せず、迂回コースを滑って下りていましたね。
話を戻します。
私はスマホを手に、参道の様子を時折画像と動画に納めながら、ゆっくりと下りました。
下りの途中にも拝殿や祠がありましたので、ご挨拶していきます。
時折地表をうねる様に這う木の根に足を取られたりしましたが、何とか無事下山した私は、拝殿に一礼し、帰路に着きました。
家に帰った私は、早速その日に撮影した画像や動画を見返してみました。
美しい風景や、光の加減で神秘的な情景を捉えた画像に満足しながらチェックを進めていきます。
と、其の時、一つの動画に目が停まりました。
其れは、裏参道の急斜面の道を撮影したものでした。
其の時、私は立ち止まったまま、しばらく道の動画を撮り続けていたんです。
動画を再生してみますと、不意に、道の上方で、何かがきらりと光りました。
何だろう?
慌てて再度動画を再生。
突然、手拭いの様な形とサイズ感の、しかしながら半透明の何かが、動画中央やや上に突然現れたかと思うと、急にマントを翻すかのように反転し、掻き消すように消えたのです。
ほんの一瞬の出来事。
でも、動画にはきっちりと残っています。
カメラのゴースト?
ではないと思う。
関係あるかどうかですが、この神社には、数あるエピソードの中に天狗伝説があるそうです。
だから、あれって・・・実は天狗の悪戯?
そう言う事にしておきましょう。
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