第93話 写真に写ったのは・・・

 これは、数年前に私が経験したお話です。

 流行り病が世界中を脅かす最中、私も当然のことながら日々の生活は会社とアパートの往復のみで、買い物も休日の昼間を避け、平日の、それも夜更けの人が少ない時間帯を選んでのまとめ買いを強いられていました。

 それ故に、元々アウトドア派の私にとっては陰々鬱々とした日々を過ごしていました。

 勿論、こうやって部屋に籠って文章を綴るのも好きなのは確かですが。

 そこで私がとった行動というのは、日曜祭日は部屋に籠り、平日の休みの日に人里離れた山中の神社仏閣を訪れる事でした。それも、なるべく早朝の内に。

 幸い、私の勤める会社は平日が休みになる事があり、連休が少ない反面、こういう面では非常に都合がよいのです。

 何を甘えた考えをしているのかと怒られてしまいそうですが、マイカーでの移動ですから、人との接触もありませんし、例えトイレ休憩でコンビニによってもマスクは必ず着用しますから。それに、車にも消毒用スプレーは常設していますし。

 その日は、私は山の中腹にある某寺院を訪れていました。山門のをくぐると、長い長い石段が私を待ち受けています。

 勿論、参拝客は私一人。

 貸し切り状態です。

 私は早速、本堂の御本尊に合掌し、流行り病の早期鎮静化を祈願しました。

 そして今度は、長い石段を下って行きます。

 上りより、下りの方が足に負荷がかかります。

 でもよく考えますと、寺院の御住職様は、これを毎日繰り返されているのですから凄い。

 これも修行――ですかね。

 長い石段を下り、漸く山門に辿り着きました、

 山門をくぐったところで、写真を一枚。

 基本、寺院の中では撮影はしません。大きなところだと、撮影禁止の所があるんです。神社ですと拝殿内は禁止になっているものの、その他は良かったりするんですが。

 こちらの寺院は特に写真撮影禁止とはなってはいなかったと思います。本堂は駄目だったかもですが。

 例えその他の伽藍内の造形物や境内の撮影はOKでも、お寺の場合、あまり撮ったりはしないですね。

 私の経験から行けば、神社に比べますと、お寺の方が色々と映ってはいけないものが写り込んでしまう気がします。

 この世のものではないものが。

 だから、写真を撮影する時は、その場所の雰囲気で判断しています。

 其の時は、境内と山門迄の参道は荘厳な空気に満たされており、別の意味で写真を撮るのを躊躇しました。

 何となく、御本尊に怒られるような気がしたんです。

 それで、唯一撮った一枚が、山門を出た所の写真です。

 でもね、写っちゃったんです。この一枚に。 

 山門の前を白い帯状の靄のような物が過ぎり、山門の軒下には円形の紋章のような物が二つ浮き上がっていました。

 勿論、撮影時にはその様なものはありませんでした。

 私は写真を撮る時に同じアングルで三枚写真を撮る様にしています。何か不思議なものが写っても、それが光学的な要因かも知れませんので、その検証のためにとっているんですが、残念な事に、この日撮影したのはこの一枚だけでした。

 フレアやゴースト?

 かもしれません。

 でも、そうとは言い切れないんです。

 その日、それ程日差しは強くありませんでした。それに、撮影時は逆光でも無かったですし。

 ただ私が見る限り、写真そのものに忌まわしさは感じられませんでした。

 零感駄男達れいかんダメンジャーズの私の感想では、信憑性に欠けるかもしれませんが。 

 でも、何となくなんですが。

 これって、この寺院の結界そのものが写りこんでしまったのかもしれない――ふと、そう思いました。

 根拠は全くありません。

 そう感じるんですよね・・・。

 何となく。

 


 

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