第86話 白装束の・・・
これは、私が数年前に体験したお話です。
当時、私は太平洋に面した関東地方の某県で、単身赴任生活をしていました。
その頃、海岸近くの丘陵にある神社にお参りしていました。
MTBで坂を上るのはきつかったですが、帰りの下り坂を一気に駆け降りるのは気持ちよかったです。勿論、スピードはセーブしましたよ。通行人と接触したら危ないですから。
その日もお目当ての神社を参拝し、坂を下りかけた時でした。
ふと気になるものが目に映ったんです。
其れは、いつも参拝する神社とは道を挟んだ隣にある小さな御社でした。
実は、その存在には今までも気付いていたんですが、余り気に留めなかったんですよね。
其の時は、何故か気になりまして、ちょっと立ち寄ってみようかと思いました。
神社に参拝する時、何かのついでに参拝するってのは余り宜しくない事だそうなんですが、気になった以上は何かの縁と言う事で参拝する事にしました。
どうやら、お稲荷さんの様でした。
境内には、きちんとアスファルトで舗装された駐車場があり、其の奥に御社は鎮座されています。
私はMTBを降り、押しながら境内に入りました。
駐車場の片隅に愛車を止め、御社に向かいます。
御社は、駐車場のすぐそばの林の中にあり、こじんまりとした、何処かほっとする様な親しみやすい佇まいです。
拝殿前で二礼二拍し、御挨拶をします。
すると、御社の中からガサゴソと音が。
どうやら、野生動物が中に入り込んでいるようです。
私は特に動じることなく、一礼しました。
これがもし、スピリチュアル的な現象なら、流石に鈍感な私でも感じ取ると思います。
参道の飛び石を踏みしめながら、私は駐車場へ向かいました。
と、その時、右目の視界の端に、木々の間に立つ白装束の袴姿の人物が見えました。
宮司さん?
私は立ち止まり、御挨拶をしようと・・・。
誰もいませんでした。
ほんのついさっきまで、そこに佇んでられる姿をこの目で捉えていたのに。
でも、気になる点が一つ。
その宮司さん、白いお面のような物を着けていたんです。
明らかにあれは、狐のお面でした。
いや、お面ではなく、顔そのものが・・・。
ほんの一瞬でしたので、気のせいだったのかもしれません。
ですが、ヴィジュアル的に視覚に捉えられたのですから、そうとは言い切れないです。
ひょっとしたら、 お稲荷様の御眷属の方が、人の姿になって私の前に現れて下さったのかもしれません。
私は御社の方に向き直ると、改めて深々と一礼しました。
不思議な体験でした。
そして。
その日から、私が決まって御参りする神社が、また一つ増えたのでした。
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