第83話 バキバキの人

 これは私が数年前に体験したお話です。

 実は私、オーラが見えたりするんですよ。はっきりとじゃないですけど。

 ただ、某スピリチュアル芸人さんの様に色から生霊から何から何まで見えるのではなく、ぼんやりと見えるだけですので、大した事は無いんですけど。

 よく残像が見えているだけだとかいう方がいますけど、そうじゃないです。

 因みに、乱視でもありません。

 ただ、いつも見えるって訳じゃありませんし、色も見える時と見えない時がありますから、余り誇らしげに言えないんですよね。

零感駄男れいかんだめんじゃあず」な私ですので、こんなもんでございます。

 でも、一度人様のオーラがはっきりと見えた事があるんです。

 それも、見知らぬ通行人の。

 その日、私は某島の神社を訪れていました。島と言っても橋でつながっていますので、チャリで楽に渡れます。

 ここには三姉妹の女神様と龍神様が祀られており、私は単身赴任の身軽さからちょこちょこ訪れていました。

 それと、もう一つの目的がありまして。

 人懐っこい猫が何匹かいるんです。猫カフェはちょっと敷居が高そうでいけない私にとって、ほのぼのさせてくれる場所なんです。

 中には、御守りが並んでいる社務所の授与所を歩き回る猫もいまして。御守りを踏まない様に器用な足裁きで好き勝手にうろつく猫に、宮司さんも苦笑いです。

「降りる様に言っても、駄目なんですよ」

 困った口調で話す宮司さんでしたが、眼は優しく波打っていました。

 猫は漸く満足したのか、社務所からぽんと飛び降りると、ゆっくりとした足取りで参拝客の足元を擦り抜け、女性や子供達の歓迎を受けていました。 

 と、不意に、私の横を颯爽と歩いて行く男性が視界に映り込みました、。

 歳は三十代後半くらい、黒縁の眼鏡を掛けており、スラックスに半袖のシャツ姿だったと思います。

 見た感じは痩身ですが、何かスポーツをされているのか、肩が異様にがっちりしていました。

 私は、じっとその男性を凝視しました。

 容姿に魅かれた訳ではありません。特に変わった服装を纏っていた訳でもないです。

 姿が、二重に見えたんです。

 二重に見えたと言えば誤解されるかもしれませんが、横にぶれていたのではなく、身体の輪郭が、実体を包み込む様にもう一つ身体から離れて見えているのです。

 オーラでした。

 明らかに白い光が、彼を取り囲む様に包み込んでいました。

 驚きました。

 ここまでオーラがはっきりと見て取れるなんて。

 私は愕然としたまま、その人物が見えなくなるまで見つめていました。

 何かしらの修行をされている方なのでしょうか。

 あれだけバキバキにオーラを放出している人は、その日以来、今のところお会い出来ていないです。

 

 


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