第82話 本日も晴れ

 これは、数年前に私が体験したお話です。

 怪談ではなく、不思議なお話になります。

 当時、私は関東地方の海沿いの某県に仕事の関係で単身生活を送っていました。

 そこは観光地とパワースポットがあちらこちらにありましたので、私は休みの都度、そういった場所を訪れていました。

 距離的にも、頑張れば自転車で周遊出来る程でしたので、健康と体力アップと体重ダウンを兼ねて、ぼぼMTBで駆けずりまわっていました。

 因みに、心霊スポットも結構ありましたけど、知らずに行った以外は極力避けましたね。まあ、中には、足げく通っていた公園が、実は・・・ってな場所もありましたけど。

 良く行ったのが、旧海軍の基地があった某公園のそばの神社と、弁天様で有名な神社のある某島、その対岸のやや内陸寄りにある神社です。

 ここまで説明してしまうと、どこなのかは分かる方には分かると思います。

 内陸寄りの神社は小高い丘陵の上にあり、そこには龍神様を統括する女神様と、先に述べた島にも関わりのある龍神様がお祀りされています。

 私はこの島に訪れる際には、まずこの神社に参拝してから行くようにしています。

 この神社に参拝する時なんですが、不思議といつも青天なんです。

 行く途中に雨に降られても、参拝する時にはしっかり晴れ間が出ているんです。また、参拝を終え、帰る時になって、今まで何ともなかったのに急に降り始めたり。

 参拝時に雨が降るのは、「清めの雨」と言って、神様に歓迎されている証拠で、縁起が良いと言われています。

 じゃあ、行き帰りの途中で 雨が降ると言うのは、どうなんでしょうか。

 神様が私に試練を与えて、それでも参拝に来るかどうかを見極め、信仰心の深さを確かめられているのか・・・。

 それとも、私の事を嫌って、訪れたくなくなるような方向に誘っているのか。

 猜疑心と言うのは、疑えば疑ううちに、入手した様々な情報が勝手に結びつき、増幅し続けます。

 罰当たりな話なのですが、ふとそう思ってしまったんですね。

 その頃、私は仕事で色々と問題を抱えていた時期で、精神的にも弱りかけていたんだと思います。

 そんな思いに憑りつかれながらも、私はその日もMTBで丘陵の上の神社に向かいました。

 その日は、出発時から天候は良く、雲一つない青空が広がっていました。

 神社に着いた私は拝殿に御参りをしました。

 日々生かして頂いているの感謝の気持ちをお伝えしていると、心地よい風が耳元を駆け抜け、拝殿へと流れて行きます。

 私の思いは、神様に伝わっているはず――そんな気がしました。

 次に、御神木に参りすると、いつもの様に女神様が姿を現わせて下さいました。

 一通り参拝を終えた私は、神社の社務所前にあるベンチに腰を降ろし、吐息をつきました。

 神々は私というものの存在を認めて下さっている。

 でも、生き様が好転しないのは何故なのか・・・。

 全てを不幸に転じてしまう負の旋律が、静かに意識下を流れていく。

 ふと、私は顔を上げ、天を仰ぎました。

 刹那、私は眼を見開きました。

 頭上に、巨大な龍の形をした雲が浮かんでいたんです。

 龍雲と呼ばれている雲でした。

 他に雲は無く。何故かそれだけが頭上に浮かんでいるんです。

 しかも、龍が横に伸びて空を駆る姿ではなく、とぐろを巻くように身を引き寄せている姿でした。

 

 安心しろ

 

 龍神様が、私にそう語り掛けて下さったような気がしました。

 私は我に返りました。

 神々に感謝し、誓いを告げ、お願いの言葉を奉じているが、自分自身はその言葉に偽りはないのか。

 自分の有り方を変えるのに、私自身は何かしたのだろうか。

 ただただ、神々に上部だけの誓いを述べているだけではなかったのか。

 私は気付きました。

 私自身は、何もしていない事に。

 行動しなければ、何も起こらないのです。

 まず、切り口は自分からやらなければ。

 その日から、私の姿勢は受け身から攻めに変わりました。

 仕事に対しても、プライベートに対してもです。

 突然の変わり様に、周囲の方々は驚いていましたが。

 そこからです。

 仕事の流れが急展開したのは。

 様々な問題は徐々に解決していきました。

 しかも、半年後には、晴れて単身赴任から解除され、自宅近くの事業所に戻ることが出来ました。

 其の一年後に、再び単身赴任の身になるのですが、一年間でも戻れたのは大きかったです。

 信念を持ち続け、行動する事の大切さを身に染みて感じた体験でした。

 


 

 

 

 

 

 

 

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