第80話 温かい光
これは、昔、私と家族が体験した話です。
その日、私達は信州の某神社を訪れていました。私と妻、それと霊媒体質の息子の三人です。
理由は忘れたのですが、他の息子達は、その日、都合が悪くて同行していませんでした
その神社は、とある山の麓に鎮座する五社からなっており、私達はいつも一番離れた御社から順々にお参りを済ませ、最後に山中の奥社にお参りしています。
その日も、いつもの様に順番に御社を回り、最後の奥社にお参りする前に麓の中社を訪れました。
中社では、ちょうど結婚式が行われておりました。
若いお二人の門出を祝うかのように、空には雲一つなく貼れわたり、優しい陽光がさんさん降り注いでいました。
私達はお参りを済ませた後、社殿の前で、デジカメで妻と息子の写真を撮り、奥社へと向かいました。
奥社までは麓から約二キロ程。
最初は緑の美しい自然歩道って感じなのですが、隋神門を境に雰囲気ががらっとかわります。
門をくぐると、参道沿いに続く杉並木に目を奪われます。
其の神々しさと美しさの醸す荘厳な雰囲気は、時の流れすら異なる全くの別世界の様な感覚に捉われます。
最初は平坦な道なのですが、御社に近付くにつれ、徐々に険しくなってきます。
最後に石段を登りますと、そこには二つの御社が静かに鎮座されています。
それぞれの御社で、日々生かして頂いている感謝の言葉を奉じ、お参りさせて頂きました。
その後、下山しながら風景を写真に収め、家路に着きました。
帰宅後、その日に撮影した画像を整理していたところ、ある一枚に目が留まりました。
其れは、中社の拝殿前で、妻と息子を撮った写真です。
二人は、拝殿の正面にある階段の横に立ち、拝殿の中が写らない様、斜め方向から撮影した写真です。
陽光を受けて眩しそうな表情の二人。
その背後に、拝殿に上がる為の木製の階段があるのですが、その傍らに、一人の人物が佇んでいたんです。
其れも、半透明の。
下半身は完全に透けています。
しかも、朧げに判別出来る服装が妙なんです。
まるで、その昔、忍者が身に着けていた鎖帷子の様な・・・。
その人物は、拝殿の中を覗き込んでいる様に見えました。
よって、顔は見えません。
でもその服装、何となく納得してしまいました。
この場所、実は忍者の郷でもあり、近くに忍者村があったり、修行されている方がいらっしゃるそうです。
ただ。
不思議なのはその人物だけじゃありませんでした。
拝殿の天井近くから入り口の軒下を経て、外に向かって白っぽく靄がかったオレンジ色の光の帯が伸びているんです。
見ているだけで、不思議にも全身が温かくなるような不思議な光の帯でした。
最初、私の指がレンズに映り込んだのかも知れないと思い、改めて画像を確認したのですが、それは絶対に在り得ないことが分かりました。
その帯は、拝殿の柱の向こうに映っていたんです。
その日、拝殿では神前結婚式が行われていましたから、神様が新郎新婦の新たな門出を祝福されていたのかもしれませんね。
ひょっとしたら、忍者の霊も、華やかな祝い事につられて現れたのかもしれません。
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