第79話 この人達に平穏な暮らしを
これは、私の息子から聞いた話です。
霊媒体質の彼は、私よりも遥かに霊体験が多く、時にはこの世のものでないナニモノかに憑りつかれそうになったりしています。
その為、彼は部屋に神社の御札をお祀りし、毎朝手を合わせて祈願しているようです。
ですが、そんな時でさえ、彼を邪魔するものが現れます。
例えば、以前、別のお話で紹介した下半身が蛇の女妖ですとか。どうやら西洋の妖らしく、若い男を誘惑して命を奪うらしいです。
その時、彼は嫌な感じがしたのですぐに追っ払ったそうです。簡単に追っ払えるのも凄いですけど。
でも、この日はちょっと違ったんです。
彼がいつもの様に御札に手を合わせていると、突然、ある画像が横から滑り込む様に入り込み、瞼の裏に現れました。
それは、小さな子供を抱きかかえた若い女性でした。
因みに 彼にはその人物に見覚えはありませんでした。
と言っても、顔はぼんやりとしか分からなかったのですが、その朧げな風貌からイメージ出来る人物に、心当たりが無かったそうです。
ただ、嫌な感じはしなかったようでした。
顔ははっきりしないものの、彼にはその女性が自分に微笑み掛けているのが分かりました。
刹那、彼は無意識のうちにある言葉を紡いでいました。
「この人達に平穏な暮らしを」
彼自身、何故そう思ったか、どうしてその言葉を紡いだのか分からないそうです。
彼がその言葉を口にした途端、二人の姿は彼の瞼から消えました。
二人は喜んでいたような気がするそうです。
今までにないパターンでした。
多くの場合、彼に絡もうとする霊は、無理矢理体に入り込んで憑りつこうとする意図が丸見え何ですが、その親子にはそんな素振りは全く無かったようです。
彼女は一体、何を求めて息子の元に現れたのでしょうか。
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