第76話 蒼い

 これは、数年前に私が体験したお話です。

 その日、私は久振りに実家を訪れたついでに、中部地方南部に足を延ばしました。

 ここには私が以前から気になって行った神社や寺院、それに古道と呼ばれる大自然に囲まれた情緒のある小径があります。

 最初にお墓参りをした後、実家を拠点に、私は今までなかなか行く機会の無かった歴史深い神社仏閣を周りました、

 至る所がどこもかしこも有名なパワースポットで、今回実家には車で帰らなかったものですから、機動力に乏しく、時間が掛かる為に訪れられなかった所もありました。

 少し悔やまれましたが、それでもお目当ての所は何とか網羅しました。

 その中で、私はとある神社に立ち寄りました。

 その神社についての事前知識は全く無く、たまたま直前でその存在に気付き、立ち寄ったのです。

 メインの国道からすぐ近くに、その神社は鎮座されていました。

 こじんまりした、何となく落ち着く雰囲気の神社です。

 イメージ的には、この街の鎮守様って言った感じがぴったりです。

 参道に足を踏み入れ、少し進んだ所で、私は思わず立ち止まりました。 

 急な斜面に、極めて自然な形で岩を組み込み創られた参道が眼の前に現れたのです。

 それは、石段と言うよりも石壁でした。

 愕然と佇む私の眼に、かなり高齢の女性が慎重な足取りで降りて来る姿が映りました。

 私は意を決しました。

 こうなれば行くしかないでしょう。

 私は足元を確かめながら、慎重に石の参道を進みました。

 途中からは這いつくばるような感じで、両手足を使いながら蜘蛛の様に進みました。

 何とか石段を登りきると、煌びやかな拝殿と、その横に、しめ縄が掛けられた巨大な岩が見えてきました。

 私が拝殿の前に立った時です。

 体が、ふわふわとした妙な感覚に捉われたのです。 

 私はぐらつく体を何とか踏みとどまって支え、拝殿に参拝しました。

 その後、そばの巨大な岩にも参拝しました。

 先程のふわふわ感は無くなり、とてつもなく澄んだ気が私を包み込んで行きます。

 私は心の中で神様に写真撮影の許しを請い、拝殿と巨大な岩を撮影しました。

 さて戻ろうかと下を見下ろしてぎょっとしました。

 私は気付いたんです。

 急斜面は、登る時よりも降りる時の方が恐怖を感じる事に。

 その後、実家に戻ってから画像を見ていて、ある一枚の画像が眼に留まりました。

 あの、巨大な岩の画像。

 三枚連続で撮影したのですが、そのうちの位置真の画像が、全体的に蒼く写っていたんです。

 撮る位置を変えずに連写したので、光の入り方も同じなのですが、何故か其の一枚だけが全体的に不思議な神々しさを醸していたのです。

 後で分かったのですが、其の巨岩こそが、まさしくパワースポットだったのです。

 不思議な事ってあるんですよね。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る