第68話 ばさっ

 これは、妻から聞いた話です。

 寝室に入り、これから寝ようとした時の事です。

 不意に、彼女は後頭部に違和感を感じました。

 ばさっ

 何者かが、彼女の髪を持ち上げ、落としたのです。

 妻か驚いて周囲を見回しましたが、誰もいません。

 でもその後、妻は慌てる事無く眠りにつきました。

 信じられない話ですが、この現象、妻にとって慣れっこだったんです。

 妻の話では、独身の時から続いているらしいです。

 いったい、誰なのか・・・それは、皆目見当つかずです。

 でも恐らくは守護霊様なのかなとは思いますが。

 ただ、髪の毛を持ち上げる行為が気になります。

 明らかに、何かのメッセージの様に感じるのです。

 それが何なのかも、分かってはいません。実際、その現象が起きた後に悪い事が起きたり体調を崩す事も無かったようです。

 妻は、寝室で、あるはずの無い線香の香りを嗅いだりします。

 ひょっとしたら、亡くなった親族の中に妻を溺愛する方がいて、守護霊となって彼女を守りつつ、時折愛でているのではないかと思います。

 本人も悪い感じはしないからと言って、不思議にこそ思うものの、余り気にしていないようです。

 大人の背の高さの髪の毛を持ち上げると言う事は、子供ではないようです。恐らくは大人。

 それも、男性のような気がします。

 別のお話でも上げましたが、妻は以前、金縛りに遭った時、線香の匂いを嗅いでいおり、またその時に、年配の男性の声で厳しく説教されたことがあります。

 恐らくは、その方が妻を守って下さっているのではと思うのですが。

 まあ、私の推論でしかないので、真実は分かりません。

 それと、この髪の毛を持ち上げる行為について調べてみたのですが、何を暗示するのか全く分からないです。

 ネットで検索してもヒットしませんし。

 私の事に気付いて欲しい――なのでしょうか。

 そうだとしたら、前述の私の推論は全て白紙となりますよね。

 それに、あの現象が、妻に存在を訴えかけているのであれば、守護霊様ではないような気がします。

 じゃあ、誰が――そう。

 多分、たまたま波長が合い、何処かから憑いて来てしまったパターン。

 もしそうだとしたら、自己主張が長過ぎる。

 ほぼストーカーですよね。

 出来る事ならば、最初に述べた私の推論論こそが真実と捉えたい所です。



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