第67話 一反木綿?
これは、去年私が体験したお話です。ちょっと信じられない様な話ではあるんですが・・・。
その日の夜も、私は日課にしている食後のウォ―キングを楽しんでいました。
時々コースを変えながら、時間のある時は5キロ以上、時間にして一時間位歩いています。
以前はジョギングもしていたんですが、昔痛めた左足膝の関節痛が再発したので、今は歩き専門です。痛めた原因は分かっているんですよね。海岸の岩をぴょんぴょんと跳びながら移動していてやってしもうたです。
今までにもこの手の体験談の中で触れてはいるんですが、散歩中にですね、たまに妙なものが目の前を通り過ぎたりするんです。
大体が、半透明の黒い影。
一度あったのが、オレンジ色に輝くカーテン状の光の帯。これは、近くの公園のランニングコースを走っている時でした。
どの場合も、意識的に見れるのではなく、頭の中が空っぽになった状態になった時に、たまに見れることがある程度です。
特に修行しているのではないので、まあこの程度で精一杯です。それにスペックアップしたくても、だいいち修行の仕方は分かりませんし。
まず物の怪や霊を見るのが目的ではないので、特にヤバそうな所を歩くでもなく、普通に民家を抜ける路地や農道を歩いてはいるのですが。
その夜も怪しげな場所を通った訳でもないです。
いつもの様に保育園とレストランを通り過ぎ、コンビニの明るい光を尻目に路地を進みます。
そして、路地裏の十字路の手前にさしかかった時の事でした。
四角い、白いものが、音も無く眼の前を通り過ぎたんです。
何?
自転車に乗った白い上着を着た人――じゃない。
第一、自転車なんて見えなかった。
目前の十字路目指しダッシュ。
十メートルあるかないかの距離。
一瞬にして到達。
辻に立ち、行方を追う。
いない。
もし、人だったら、後ろ姿を確認できたはず。
じゃあ、あれって、何?
真っ先に浮かんだイメージは、一反木綿。
でも、よくあるイラストに描かれたそれみたいに細長くは無かった。
むしろ、白い座布団が飛んで行くようなイメージ。
一反木綿の亜種か?
色々と推論を並べ立てても、結局結論は出ずです。
残念ながら、その日以来見てはいません。
それと幸いな事に、憑いて来てもいないようです。
あれは妖だったのか、ただ通りすがっただけの霊なのか。
それとも、私の錯覚?
疑問は尽きず消えずですが、取りあえず歩くことにします。
ひょっとしたら、また出会えるかもしれませんので。
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