第64話 白い靄
これは、息子から聞いたお話です。と言っても、よく私に体験談を話してくれる霊媒体質の息子ではなくて、霊感が一切無いもう一人の息子が、学生時代に唯一体験したお話です。
その日の夜、彼は自分の部屋で勉強に勤しんでいました。
恐らく、学校である試験の勉強をやっていたのだと思います。
テキストに集中している最中、不意に彼は妙な感覚に襲われました。
背後から、誰かに見られているような気配がするのです。。
気になった彼は、徐に振り向くと背後にある部屋のドアに目を向けました。
でも、そこには誰もいません。
否――そこじゃない。
ドア近くの壁側に並ぶ棚の前に、それはいました。
人の形をした真っ白い靄のような物が、そこに佇んでいたのです。
彼は呆然としたまま、その靄を凝視しました。
容姿は全く分からない。
でも、その時は何となく女性だと思ったそうです。
其れも子供の。
その靄は、彼に近付いて来る訳でもなく、じっとその場に漂っていました。
暫くすると、やがてそれは彼の前から消え失せました。
彼には霊感はありませんが、特に悪意は感じられず、怖くは無かったそうです。
その後、その白い靄は彼の前に現れる事はありませんでした。
この話を聞いた時、私も特に悪い感じはしなかったです。
私自身、その判断を明確に下せる能力は備わってはいませんので、あくまでも個人的な感覚でしかないのですが。
少なくとも、彼に憑りついている訳ではなさそうです。
ただただたまたま立ち寄っただけの、通りすがりの霊なのかもしれません。
この頃の我が家は、今までにも他のお話でも書いていますが、妙な現象が時折起きていました。
よく海外の心霊番組であるような、あんな激しいポルターガイストではないんですが、室内干しの洗濯物が勝手に揺れたりとか、写真を撮るとオーブが写ったりとか。影のような物が視界の端を過ぎったりとか。
気のせいかもしれません。そう片付けたい気持ちの方が大きいのですが、実際に目の当たりにすると、そうは言い切れないのです。
霊道は無いと思うのです。霊感のあるもう一人の息子と私が引き寄せてしまっていたために起きていたようなので。
そう考えると、たまたま立ち寄っただけの霊の様な気もします。
でも、一ヶ所に佇んで息子をじっと見ていたというのは、何となく気になります。
悪意は無いにしろ、彼に憑りつこうと考えていたのじゃないかとか。
先祖や身内の霊なら、恐らくはこんな形では現れず、夢の中に現れてはっきりとメッセージを伝えて来ると思うのです。
でも、これこそ私の勝手な思い込みかもです。
もし、私にハイスペックの霊感があれば、こういった話を聞いても正確に判断できるのですが・・・。
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