第59話 女神様!
これは、今から数年前に私が体験した出来事です。
その頃、私は関東の某所にある事業所に勤務していました。
単身赴任生活でしたので、休みの日は気ままにあちらこちら出向くことが多かったです。
足はもっぱら自転車。マウンテンバイクのタイヤを街乗り用に変えたもので、あっちこっちうろうろしていました。
海が近かったので、海岸線を走ったり、山越えをして少し離れた観光地まで足を延ばしたり。
ただ、最終目的は、ほぼ神社仏閣をはじめとするスピリチュアルなパワースポットでした。
その日も、山越えをして弁天様と龍神伝説で有名な島を目指していました。
島と言っても橋が架かっていますので、自転車でも楽々渡れます。
でも、そこに行く前にもう一つ目的の場所があるんです。
其れは、高台にある神社なのですが、先述の島に関わる龍神様と、龍神様を統括されている女神様がお祀りされている神社なのです。
私はこちらに来る際には、その神社に先に立ち寄ってから、島を目指すようにしています。
長い坂道を上ったり下ったりしながら、漸く到着。
まずは拝殿に向かい、二礼二拍一礼。
自己紹介と御挨拶、そして日々生かして頂いている感謝の気持ちをお伝えします。
すると、拝殿から柔らかな心地良い風が流れて来ると、やさしく頬を撫でて過ぎて行きました。
心身が清められるような感覚が、私の意識を満たしていきます。
同時に、厚い気の鎧が身体を包み込むのを感じます。
ここを訪れると、癒されるのと同時に、鋼の精神を承れるような気がするのです。
その後、私は神社の入り口近くにある御神木に向かいました。
普通御神木と言うと、天を貫くように伸びた杉や檜をイメージするのですが、この神社の御神木は広葉樹で、こじんまりとした樹木でした。
但し、枝葉を広げたその姿は、柔らかな優しさに溢れているよう感じられました。
二礼二拍一礼し、再び顔を上げた瞬間、私の眼は御神木に釘付けになっていました。
御神木の幹に、美しい女性の上半身が浮かび上がっていたのです。
その御姿は、私に優しく微笑み掛けているようにも見えました。
残念ながら、私には、その女性の姿は輪郭しか確認できません。が、其の神々しい御姿に私はすぐに察しました。
この神社の御神体の女神さまだ・・・。
私は震える手でスマホのレンズをその女神様に向けました。
不意に、女神様の表情が硬く強張ったように見えます。
何となく、怒ってられるような・・・。
どうやら、写真を撮ろうとした行為が良くなかったようです。
「失礼しました」
私はスマホを降ろすと、慌てて女神様に謝罪しました。
すると、何となくその表情も、さっきまでとはうって変わって温和になられたような気がしました。
その後、これをきっかけに私はこの神社を頻繁に訪れる様になりました。
女神様ですが、大体いつもはっきりと御姿を拝見出来るのですが、時には姿を隠される時もあります。
それでも、ここを訪れる都度、私は心の安らぎと明日への活力を得ることが出来ました。
久しくお訪ねしていませんが、機会があればまた立ち寄りたいと考えています。
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