第58話 女神様?

 これは、息子から聞いたお話です。

 今までも、ここでのお話で書いてはいますが、彼は霊媒体質なものですから、色々と呼びこんでしまうんですよね

 それもあって、神棚はないものの、神社の御札を部屋に祀ったり、御守りを携帯したりしています。そのおかげでしょうか。以前より妙な現象は減ってはきている気がします。

 起きても中に入ってこようとはしないようです。

 その日の朝も、彼は眼を閉じて神社の御札に手を合わせていました。

 すると、不意に美しい女性の姿が彼の目に飛び込んできたのです。

 彼が言うには、その映像は、閉じた瞼の裏側に、横からスライドするかのように現れたというのです。

 その女性は、優しく彼に微笑み掛けていました。

 ただその女性、下半身が蛇だったんです。

 やがてその姿は消えたそうなんですが、心配になった彼は私に電話を掛けてきました。

 でも、私とて神学や伝承の専門家ではないので、聞かれたところですぐには回答できません。

「女神様? ちょっと調べてみるよ」

 彼にはそう返事をしました。

 ネットで調べてみると、すぐに出てきました。

 メリュジーヌ。

 フランスの伝承に出て来る水の精霊です。

 ちょうど朝の出勤前でしたので、詳細は調べられませんでしたが、私はすぐにその旨を息子に告げました。

「じゃあ、心配いらないか」

 彼はほっとしながらも不思議そうな声で答えていました。

「守護神だったりして」

 私がそう言うと、

「どうだろうか」

 と、彼は怪訝そうな返事。

 その日は、それ以上詮索はしませんでした。


 この話を書くに当たって、私は再度、ネットで調べてみました。

 検索ワードは『上半身が女性で下半身が蛇 女神』。

 ヒットしたのは、あの日の検索で一番に出て来た名称とは異なるものでした。

 ラミア―。

 ギリシャ神話に出て来る女妖です。

 ある女神の怒りを買い、下半身を蛇に変えられてしまった女性です。

 彼女はその後、子供を殺したり、青年を誘惑した挙句に食い殺す魔物と化したそうです。

 この時、先述のメリュジーヌについても詳しく調べてみたのですが、彼女もまた、母親に呪いを掛けられて下半身が蛇(又は龍)になってしまったという悲しい過去がありました。

 息子の前に現れたのは、いったいどちらなのでしょうか。

 メリジューヌならまだしも、ラミアーだったら・・・。

 


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