第57話 猫の集会

 これは、三年くらい前に私が体験した奇妙なお話です。

 私の休日の過ごし方は買い物に行ったり、近場の神社をお参りしたりしているのですが、時々自転車でうろうろと走り回る事があります。

 私が独身の頃に買ったマウンテンバイクなのですが、確か特殊な金属で出来ており、錆びないので今だ乗り続けているんです。流石にサドルは一部裂けてしまったり、タイヤは何回か交換しましたが。

 その日は、少し離れた緑地公園まで足を延ばそうとアパートを出発しました。

 そこは車でも行く事があり、広大な敷地には貸しボートで遊べる大きな池やプール、球場、サッカー場、テニスコート、アスレチック、レンタサイクル(但し公園内のみ)と、色々整備されており、それらの施設を囲む様に様々な樹木が植えられています。

 私が利用するのは、其の木々の間をぬうように作られた散歩道です。散歩道はやや広めの公園の外周に沿ったコースと、池のほとりに沿ったコースの二種類あり、外周コースは確か二キロ以上はあったような気がします。

 私はその公園に行くと、それぞれのコースを一周ずつ歩いています。このコース自転車でも回る事は可能なんですが、私は歩く方が好きですね。

 それと、ここの公園、パワースポットという訳ではないんですが、訪れるとすごく心が安らぐんです。

 いわば、癒しスポットってとこでしょうか。

 その日も、公園での定番の散策を終えた後、 私は帰路につきました。

 と言っても自転車で来てますから、ここからしばらくの間は、更に体力を使う事になります。

 公園を出発し、しばらく進んだ所で、私は微笑ましい光景が目に移りました。

 道沿いに畑の真ん中で、猫が数匹集まっているのです。

 畑と言っても耕されてはいるようですが、まだ何も植えられてはおらず、のっぺりとした地面が広がっていました。

 猫達は、あるものは用を足し、あるものはじゃれ合い、あのものは香箱座りでくつろいでいました。

 猫の集会です。 

 以前、何かで猫は集会をすると聞いた事がありました。

 猫は元々群れたりせず、縄張り意識が強い動物ですので、そんな事あるのだろうかと思っていたものですから、この光景を目の当たりにした時は驚きました。

 私は自転車を止めるとスマホを取り出し、その光景を何枚か画像に納めました。

 猫達に別れを告げ、その場を立ち去ろうとしたその時です。

 スマホが、私の手から弾け飛んだのです。

 スマホはそのまま前方に素っ飛び、アスファルトの路面に叩きつけられました。

 私は慌てて須磨をスマホを拾い上げました。

 幸いにも、傷や破損は無く、昨日にも異常は見られませんでした。

 猫達を見ると、集会を終えたのか、畑にはもう姿がありませんでした。

 何処か腑に落ちぬ感じはしたのですが、このままここに留まるのは良くないような気がしましたので、私は何事も無かったかのようにその場を立ち去りました。

 帰宅してから撮影した画像をチェックしたところ、猫達が写っている画像に、赤い柱上の光が映り込んでいました。

 後で調べて分かったのですが、猫の集会って、普通夜にするものらしいです。互いにコミュニケーションを取るために。縄張りを認識し合っているのでしょうか。

 ですが、この日は恐らく夕方の四時頃。まだ日が高かったのを覚えています。

 猫達にとって、何か緊急を要するお話があったのでしょうか。

 それだけに、私に見られたのは、彼らにとって不都合だったのかもしれません。

 私のスマホが弾け飛んだのは、猫達の――まさか、それは無いと思いますが。

 でも、画像に移った赤い光の柱が気になりました。

 多分、太陽光が入り込んだだけだとは思うのですが・・・。

 結局、消去しましたよ。

 ちょっと嫌な感じがしましたので。

 それにしても。

 あの時、猫達は何を話し合っていたんでしょうね。

 


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