第54話 撮ってはならない
これは、かなり昔のお話になります。
まだ子供が小さい頃、某地方にある神社に参拝に行きました。
大晦日だったのですが、まだ昼間でしたので、さほど混雑はしていませんでした。
また、天気も良く、日差しが温かだったのを覚えています。
そばに美しい川が流れており、ここで手を清めたりする方もおられます。
私はその川を背景に、デジカメで何枚か家族写真を写した後、拝殿に向かいました。
拝殿は撮影禁止でしたので、参道で何枚か写真を写し、参拝後に帰路につきました。
家に帰ってから、画像のデータをパソコンに落として整理していた時、一枚の画像に眼が留まりました。
川を背景に撮影した家族写真です。
問題は、その川の方にありました。
川の中央辺りに、水面に立つ修行僧らしき姿が。
それだけではありませんでした。
目を凝らして水面を見ると、空を舞う天女や巫女の様な装束の女性の姿、そして、神話に出て来る神様の髪型――「みずら」の男性の顔などが、ぼんやりと見えるのです。
極めつけは、画面の右端に見えた、巨大な顔でした。大きな目鼻立ちで、歯をむき出しにして笑っています。それはにこやかと言うのではなく、むしろ嘲笑に近いものでした。
神というより鬼神。そんなイメージが私の頭に浮かびました。
何よりも気になったのは、その視線が私達に向けられていたのです。
後になって気付いたのですが、この川は写真撮影禁止になっていました。
拝殿同様に神聖な場所――神々がおわす場所だったのです。
その後、色々と思いも寄らぬ事態が頻発しました。
全く予想だにしなかった事態が。
全てを写真のせいにしてはならないとは思います。
原因は、ほぼほぼ自分にもあるはず。
ですが:::。
恐らく、あの嘲笑は、禁忌を犯した私を諫めるものだったのでしょう。
因みに、この画像はもう残っていません。
不思議な事に、当日撮った他の画像は残っているのですが、この画像だけが何故かデータごと消失したのです。
私に消した記憶はなく、無論、妻も同様でした。
それから何年か経ったある日、私は再びその神社に参拝する機会がありました。
その時は私一人だったのですが。
私は拝殿に参拝する前に、その川に立ち寄ると、二礼二拍一礼し、以前の無礼を謝罪しました。
そう簡単には、お許しいただけないかとは思いましたが。
それでも、何となくですが、今は全ての物事が良い方向に向かっている様な気がします。
皆さんも写真を撮影される場合には、くれぐれもご注意を。
神社仏閣に関わる神聖な場所では、特にです。
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