第51話 どん どん どん
これは昔、私が体験したお話です。
あの頃、金縛りには頻繁に掛かり、室内で写真を撮ればもれなくオーブが写るという、怪談ネタには困らない環境で生活していました。
今になって分かったのですが、原因はどうやら引き寄せ体質の自分と息子に会ったようで、私達が家を空けると何も起きないという事実が全てを物語っております。
その日も仕事が忙しく、夜遅くに帰宅しました。
妻と息子達は既に寝室で休んでいます。
私は一人寂しく食事をとると、入浴後、すぐにベッドに潜り込みました。
疲労がたまっていたせいか、すぐに睡魔に襲われてしまいます。
心地良い眠気に誘われて、私は眼を閉じました。
刹那、不意に体が強張るのを感じました。
金縛りです。
足先から上半身へと、耐え難い緊張が私を呑み込んでいきます。
これは疲れから来るものではないな――私はすぐにそう察しました。
生理的な理由の場合と霊的な場合とで、掛かり方が違うんです。
それについては、またの機会にお話しするとして。
私は眼をかっと見開きました。
金縛りを及ぼす存在の正体を見極めようとしたのです。
何も見えない。
どん どん どん
この音・・・。
誰かが壁を叩いている。
私のベッドは片側を壁にぴったりとくっつけていました。
その打音は、確実に壁から聞こえたのです。
どん どん どん
またかよ・・・俺は疲れているんだ。
静かに寝かせろよ。
何だか、だんだん腹が立って来る。
日ごろの仕事のストレスもあってか、恐怖を怒りが凌駕する。
どん どん どん
うるせえっ!
いい加減にしろっ!
激高する魂の叫びが、金縛りの呪縛を弾き飛ばす。
同時に、壁目掛けて肘打ちを一発ブチかます。
どおん
私の一撃が壁に炸裂。
途端に、壁を打つ音はだんまりを決め込みました。
まさか、私が反撃に出るとは思いも寄らなかったでしょうね。
結局、相手が何なのかは、分からなかったのです。
確認出来たのは、その打音だけだったので。
しかしながら、外から来るとは・・・。
今までにないパターンでした。
そうなんです。壁の向こうって、外なんですよね。其れも二階の。
梯子か脚立を使わないと、到底無理な話なんですよ。
因みに、壁を叩かれることは、その後はありませんでした。
怖がらずに反撃に出る私を、危ない奴だと思っているのかもしれません。
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