第43話 赤いパーカーのニキ

 これは、私の息子から聞いた話です。

 息子は就職して一人でアパートで生活しているのですが、まあ、そこでも色々と体験するようです。

 部屋に憑いて居るというのではなく、勝手にやって来ると言えば良いでしょうか。

 入居前に私も彼に同行し、内見したのですが、変な気の淀みも無く、特に嫌な気はしなかったですし、むしろ落ち着いた良い部屋だと思ったくらいでした。

 まあ、私は霊能師じゃありませんから、偉そうに分かった口は効けないですが、直感的にそう感じたんですよね。

 どちらかと言うと、息子の体質が原因なんですよ。

 色々なもの? を引き寄せてしまう霊媒体質のせいか、この手の話が尽きる事が無いんです。

 但し、憑りつかれる迄にはなっていないところを見ると、彼を背後から守って下さっている方の力が強いんでしょう。

 それ故に、ここに書き込むお話も、彼の体験談が圧倒的に多いです。勿論、本人の承諾を得て書いていますから、ご心配なく。

 さて。その日の事ですが、彼はアパートのリビングでくつろいでいました。仕事が忙しく、部屋でまったりする事で、日頃の疲れやストレスを解消しているそうです。

 その時、襖を開け放っていた寝室の方に妙な気配を感じました。

 振り向くと、真っ赤なパーカーにベージュのパンツ姿の人物が眼に飛び込んできました。

 若い男性の様です。

 不思議な事に、顔ははっきり見えない。

 息子はすぐに分かったそうです。

 それが、生きている者ではない事を。

 彼はじっと赤いパーカーの男を見つめました。

 何故か、恐怖心は全く無かったそうで。

 あれ、変なのがいるわあってくらいなもので。

 本人曰く、危害を加えるような感じがしなかったらしい。

 どちらかと言うと、戸惑っているのは赤いパーカーの男の方でした。

 息子に気付かれた事に驚いているようです。

 こいつ、俺の事が見えるのか――そんなリアクションだったらしい。

 普通なら、この手の霊は存在に気付いた者に憑き纏い、自分の想いを伝えようとするのでしょうが、この方はちょっと違いました。

 相手が何となく気まずい感じを醸していたそうです。

 かくれんぼで鬼に見つかった時の様に。

 少しも動じずに見つめる息子に対し、赤いパーカーのニキはおどおどしながら少しずつ消えてったとの事。

 自分の存在を見極める者に驚き、恐怖? する霊もいるなんて。

 私も驚いた次第です。

 それとも、彼を守って下さる方の力が相当強いのか。

 この話は、またの機会にお話しする事にしましょう。

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