第35話 白い珠
これは、息子が中学生の頃に体験した話です。
その日、私は家族と共に妻の実家に訪れていました。
実家に着くと、私達は居間に通されました。
居間は和室で、部屋の中央に炬燵がしつらえてあります。
何かのタイミングで、居間に息子と妻の姉――つまり、彼にとって伯母と二人きりになった時がありました。
部屋の隅には立派な神棚がお祀りされており、彼は炬燵に入りながら何気に其れを眺めていたそうです。
すると、不意に神棚の下に白い珠が現れたのです。
その大きさはバスケットボールくらい。結構なサイズです。
息子は驚いて、其の球をじっと凝視しました。
白い珠は、ゆっくりと伯母の背後に回り、脇をふわふわと漂っています。
でも、伯母はその珠に何の関心も示しません。
(伯母さんには、見えていないのか)
彼はすぐにそう察しました。
もし伯母にも見えているのなら、こんなに冷静にいられる訳は無いでしょう
やがて白い珠は、ゆっくりと彼に近付いてきました。
その時も、息子は特に怖くは無かったようです。
畏怖よりも驚愕と疑問が、彼の意識を支配していました。
白い珠は、彼のすぐ横をすり抜けると、忽然と消え失せました。
(あれはいったい何だったんだろう・・・)
息子は首を傾げました。
絶対に、幻や見間違いではありません。
彼は眼の前の伯母にこの事を話そうか迷いました。
でも、伯母に尋ねたところで、恐らく彼女には見えていなかったでしょうから、怪訝な表情を浮かべるだけなのは明白でした。
とは言え、私もそれを目撃した訳ではありませんので、コメントのしようがありませんけど。
まあ、神棚から現れた事を考えれば、間違いなく悪いものではなさそうです。
息子本人も悪意は感じなかったと言っています。
ひょっとして、神様?
まさか・・・でも。
確かに、さもありなむ。
素直に推測すると、白い珠の大きさが、かなりでかい点を考えれば、通常よりもパワーに満ちた存在なのかもしれません。
更に判明した不思議な事実。
息子の話では、この白い珠を見て以来、霊を見たり感じたりする機会が増えたそうです。
息子の潜在意識に埋もれていた霊感を、あの白い珠が開眼させたのでしょうか。
但し、私同様、彼は自分の意志で霊を見る力までは持ち合わせてはいないのですが。
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