第17話 クリスマスのメッセージ
まだ子供が小さい頃のお話です。
その頃、室内で写真を撮ると時折オーブが写ることがありました。
新築で建てた家ですし、土地自体も私が見る限りでは嫌な感じはしなかったのですが。
妻も何か感じる様で、ふと視線の片隅に小さな影が動く事があるそうでした。
ただ、ひとえに言える事は、その現象に少しも悪意を感じなかったのです。
私も多分ただ通りすがっただけの存在だろうと考え、妻も「通りすがりの霊ちゃん」と呼んでいました。
姿は見えないものの、何となく何かがいる気配を感じたりはするのです。
特にそれを顕著に感じたのは、私が深夜にパソコンでネット上にアップされた心霊写真を見ている時でした。
ふと気が付くと、何者かが脇から覗き込む気配を感じるのです。
残念ながら、姿は見えませんでしたが、明らかに私の肩越しからパソコンを覗き込んでいる何かを感じました。
どうやら、彼らもこういったジャンルに興味を持っているようです。
不思議にも、私はその存在に恐怖心を抱いたりはしませんでした。
姿がはっきりと見える訳ではないので、錯覚や思い過ごしかも知れないという疑念が払いきれなかったからです。
それは妻も同じでした。
「たまにね、物が動く時があるのよ。室内干ししている洗濯物とか。多分、気のせいだと思うけど」
妻が時折そう私に話すのですが、特に怖いとは思ってはいないようでした。
本人も、恐らく気のせいだと考えていたからなのでしょう。
が、ある時、転機が訪れました。
その年のクリスマスの事です。
私は、飾り付けを終えたツリーをじっと眺めていました。
その時、ふと試してみようと思い立ったんです。
もし、本当にこの家に何かいるのなら、ツリーの飾り位なら揺らせるかもと。
私はツリーにぶら下げた赤い珠の飾りを見つめました。
もし、誰かいるんだったら、あの飾りを揺らしてみてよ。
私はそう心に念じました。
刹那。
珠の飾りが僅かに揺れたんです。
それも一瞬ではなく、しばらくの間、揺れ続けていました。
他の飾りが全く揺れていないのに、その一つだけが。
私は驚愕に言葉を失いました。そして同時に、底知れぬ恐怖を感じたんです。
確実に、何かいる。
多分、何処からかここにやって来た何かが。
今は障りを及ぼさないものしかいなくても、ひょっとしたら、そのうち厄介な代物がやって来るかも。
それからすぐに、私は行動に移しました。
神棚を設置し、御札をお祀りしたのです。
スピリチュアルなジャンルが大好きな私でしたが、実は今まで神棚を祀った事が無かったのでした。
すると不思議な事に、それ以降、室内で写真を撮ってもオーブが写る事は無くなり、金縛りにも合わなくなりました。
私にとっての転機は、それだけではありませんでした。
生き方を変えてみたんです。
過去を振り返るのではなく、常に前向きに、ポジティヴであるように考え方を変えてみました。
勿論、失敗すれば反省はしますが、くよくよせずに先に進む事を考える様にしたんです
あの頃は仕事で重い悩んでいる事があり、それが私を次第にネガティヴな思考に追い込んでいました。
そんな、自分のマイナス思考が、色々なものを家に引き込んでいたような気がしたのです。
後々分かったのですが、私が若干霊媒体質な所があり、憑りつかれはしないものの、何かしら周りに近付いて来るようなのです。
因みに、息子は私以上にこの気があり、後々色々な体験をすることになります。
ツリーの飾りで何者かが私に伝えてくれたメッセージ――私にとって、それはある意味、人生の転機を知らせるクリスマスプレゼントだったのかも知れません。
ひょっとしたら、これから訪れるかもしれかった、身の毛のよだつような恐怖を回避する為の・・・。
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