第16話 えっ???

 新潟の家で体験したお話。ちょっと短いかもです。

 あの日の夜、自分のベッドに潜り込んだ時の事でした。

 目を閉じるより先に耳鳴りが。

 あ、来た来た来た。

 金縛りの前兆です。正直もう慣れっこになっていて、恐怖心は皆無。

 むしろ、何か見えたり聞こえたりしないかと好奇心に沸き立てられ、思わずにやり。

 そう思っているうちに、四肢が見事に麻痺。金縛り状態に陥りました。

 この時は、まだ金縛りを解く術を体得していませんでしたので、眼は動くものの、頭は動かず。

 眼球をきょろきょろさせながら、何か見えないか周囲を見渡します。

 不意に、頭の方で人の気配が。

 見ると、ショートヘヤーの見知らぬ少女が、私の布団に潜り込もうとしています。

 小学生・・・それも、低学年くらいでしょうか。

 皺だらけの白っぽいショートパンツに、よれよれの白いカットソー。少し大人びた表情には生気が無く、力無く気だるそうに開かれた虚ろな眼が、中空を泳いでいました。

 私は慌てて跳ね起き、上半身を起こしました。 

 そう。

 動けたんです。

 金縛りの真っ最中のはずなのに。

 ですが、その驚きよりも、もっと衝撃的な光景が、私の眼に映っていました。

 私は寝ていたんです。

 正確には、私の身体は。

 私は上体を起こした姿勢で、ベッドに仰向けの格好で寝ている自分の姿を凝視していました。

 隣で添い寝する見知らぬ少女の存在よりも、むしろこちらの方がショッキングな現象でした。

 このままじゃまずい。

 本能的にそう察した私は、横たわる体に慌てて身を重ねました。

 刹那、耳鳴りが消え、本体を束縛していた金縛りも解除されました。

 私は隣を見ました。

 添い寝していたはずの少女の姿は無く、その痕跡すら残ってはいません。

 私は上体を起こすと、大きく深呼吸しました。今度は間違いなく魂が器――肉体に納まったまま、それに従っています。

 さっきのは、たぶん。

 幽体離脱。

 上半身だけですが。

 それでも、初めての経験に動揺し、心臓の拍動は激しく脈を刻みます。

 もしあの時、上半身を起こしただけでなく、ベッドから立ち上がっていたら。

 私はどうなっていたんでしょう。

 また再び肉体に戻ることが出来たのでしょうか。

 そして、私の隣に潜り込んで来た少女は何者なのか。

 いくら考えても思い当たる節が無く、釈然としないまま、私は眠りにつきました。

 


 


 

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