第13話 この写真・・・
これは思いっきり昔に私が体験した話です。
中学三年生の時の修学旅行で、関東地方の某お寺に立ち寄りました。
何てお寺だったかは覚えていないのですが、結構境内は広かったように覚えています。
何かしらの由緒があるお寺だったのでしょうが、当時の自分はそういった方面に興味が無く、ただただうろうろ歩き回っていました。
気が付けば友人達とはぐれ、大きなクスノキの前に立ってきました。
樹齢何年なのだろうか・・・。
大きくうねった枝と高い樹高に何かしら圧倒される存在感を感じながら、何か惹かれるものがあり、私はじっとそのクスノキを見つめていました。
クスノキはその風格が示す通り、御神木の様でした。
「写真撮ってあげるよ」
不意に声を掛けられ、振り向くと、担任の女性教師が私にカメラを向けて立っていました。
当時、彼女は二十代後半で独身、細身の体躯でいつも明るく、生徒達からの人気の先生でした。
多分、私が一人でぽつんと立っているのを見て、心配になったのでしょうか。そんな優しい先生でした。
「笑って笑って! 」
「あ、はい」
戸惑いながらも先生の好意に甘え、私はフレームに納まりました。
「写真出来たら上げるからね」
屈託のない笑顔で近付いて来る先生に、私は困惑の表情を浮かべました。
「ありがとうございます。でも、先生、ここって写真撮影禁止って書いてありましたよ」
「え、そうだったっけ。まあいいじゃん、一枚くらい」
先生は一瞬焦った表情を浮かべましたが、最後は苦笑。
「集合時間に遅れないようにね」
そう言い残すと、私を残し、去って行きました。
私としては、もう少しお話をしたかったのですが。
先生は見落としていたんです。個々のお寺の山門の前に、『写真撮影禁止』と書かれた立て看板が建てられていたのを。
そのうち友人達と合流し、しばらく散策した後にバスに戻りました。
修学旅行が終わり、しばらくたった頃、先生から数枚の写真を頂きました。
家に持ち帰り、見てみると、あの時、クスノキの前で撮ってもらった写真に釘付けになりました。
太い幹や枝葉の間に、色々なありえないものが写っていたんです。
修験道姿の人物、走るポーズをとっている韋駄天? 、白いワイシャツを着たサラリーマン、老婆とも獣ともとれる黒い影、人、人、人・・・。
私は驚愕に頬を強張らせたまま、それらを食い入る様に見つめ続けました。
不思議にも、何故か恐怖心には煽られる事はありませんでした。
私は母にも見せましたが、気のせいだと一笑されてしまいました。
それから何日かたった頃、母の知り合いのおばさんが家に尋ねてきました。
母は看護師をしていましたので、そのおばさんと知り合ったのも、恐らく母が務めていた病院に来院された時だと思います。
おばさんは、お祓いを生業としている霊能師でした。
よく怖い話の体験談の中で、体験者が、知り合いの霊能師や霊能力のある友人に相談したとかいうシーンが登場します。
そううまく身近に能力者がいるものか? と、疑いの眼差しでついつい見がちだったのですが、よくよく考えれば、私の場合も身近にいる訳で、そうそう不思議じゃないのかもしれないと思ってしまう今日この頃です。
「あの写真、見てもらったら」
母に促され、私はそのおばさんに写真を見てもらう事にしました。
「気の所に色んなものが写っているんです」
私の説明を聞きながら、おばさんはしげしげと写真を見つめました。
「心配いらないよ、大丈夫」
「えっ? 」
おばさんの返事に、私は拍子抜けしました。
「あなたの身体に大きな龍神が巻き付いているのが見えるから。ちゃんと守って下さっているから安心しなさい」
おばさんの言葉にほっとしたのと同時に、龍神様が守って下さっている事を知り、驚きと嬉しさに思わず笑みを浮かべてしまった私でした。
そして今も感じるんです。
龍神様がそばにいて下さるのを。
時折なんですが、鱗の様なきらめきが視線の端を過ぎる事があるんですよね。
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