第10話 ばちが当たった。

 ちょっと短いお話です。

 昔、子供達がまだ未就学児だった頃、GWとお盆、そして年末年始は東海地方にある私の実家で過ごしていました。

 あれは、確か、お盆休みの時だったと思います。私の仕事の関係で日本海側の中部地方に住んでいましたので、たまにしか帰省できませんでしたので。久し振りに会う孫達に両親も喜んでくれました。

 家族そろっての車での大移動で、運転はもっぱら私が担当していましたから、夕食を終え、風呂から上がると全身を心地良い疲労感が包み込んできます。

 妻も子供達も長旅で疲れたらしく、早々と寝る事になりました。

 両親が私達に用意してくれたのは、神棚のある部屋でした。隣の仏間の方が広いのですが、そちらはエアコンが無く、神棚の部屋は狭いながらもエアコンがついているという事でこちらにしたようです。

 とは言え、まだ子供達も小さかったですから、決して狭い訳ではなく、むしろ丁度良い広さでした。

 仏間の方が薄暗く、かえって子供達も怖がるんじゃないかと思ったので、これでよかったのです。

 荷物を片付け、部屋いっぱいに布団を敷き、私達は横になりました。 

 妻も子供達も疲れがどっとでたのか、すぐに寝息を立て始めます。

 だけど私の方は睡魔のピークが過ぎてしまい、中々寝付けません。

 でもパターン的にはこの方が良かったんです。

 私が先に眠りに落ちたら、恐らくは鼾がうるさくて眠れないでしょうから。

 私は何度も寝返りを打ちながら、再び睡魔の波が訪れるのを待ちました。

 普段は真っ暗にして寝ているのですが、夜トイレに起きた時に困らないよう、オレンジ色の常夜灯を付けっぱなしにしていましたので、私にはこれが眩しく感じられ、余計に睡魔の訪れを妨げていました。

 暑いからなのでしょう。ふと見ると、妻も子供達もタオルケットは足元に蹴っ飛ばしています。

 不意に、妻が寝返りを打ち、私に背を向けました。

 体を少し丸めているせいか、お尻を突き出す様な体勢で寝ています。

 突然、眼前に迫る妻のお尻に私は目を奪われました。

 眠れない事もあってか、私は何気に妻のお尻に手を伸ばしました。

 その時です。

 触れようとした刹那、強烈な痺れが私の右手を襲いました。

 痺れは腕から肩へと広がり、それは耐えがたい痛みを伴って私を苛みました。

 私は、布団の上をごろごろ転がりながらのたうちまわりました。

 

 ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい

 

 私は心の中で必死に謝罪しました。

 すると、その瞬間、あれだけ酷かった痺れと痛みが、嘘の様に消え失せたのです。

 恐らく、良からぬことをしようとした私に、神棚にお祀りされている神様が罰を与えたのだと察しました。

 私は神様に一頻り謝罪した後、布団に横たわりました。

 その後は何のお咎めもなく、取り合えず無事眠りにおちることが出来ました。

 神仏の存在を身をもって確信した出来事でした。 

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