第2話「かあああん」の後日談

 一話目の「かあああん」には後日談があります。

 あの少女の霊を部屋で目撃してから、しばらくした頃、私は妙な夢を見ました。

 あの少女と手を繋いで見知らぬ路地を歩いているのです。

 少女はこの前とは違い、真新しい白いワンピースを着ていました。

 彼女は私の右側を歩き、繋いだ手を上機嫌で大きく振っていました。

「神社に連れて行ってくれるんだよね」

 少女は笑顔を浮かべ、嬉しそうに私に話し掛けてきました。

「そうだよ」

 私も笑顔で答えます。

 と、その時、もう片方の手も誰かとつないでいる事に気付きました。

 男の子でした。

 背は私の腰ほどでしたが、顔がジャックオランタンのかぼちゃの様に大きく、目鼻や口も異様にでかかった上に、子供にしては老け顔でした。

 本能的に、この子は少女の弟だと察しました。

 同時に、彼もこの世のものではないという事も。

 少年も少女同様、嬉しそうに私と繋いだ手を大きく振っています。

「そろそろ着くよ」

 私が二人に声を掛けた時でした。

 不意に、民家の間から鳥居が現れました。

 途端に、眩い白い光が辺りを満たしました。まるで、雨上がりの晴れ間の様な、心地良い、澄んだ日差しでした。

 石で出来たこじんまりした鳥居なのですが、そこには黒い龍神様が二柱巻きついており、私をじっと見降ろしていました。

 私は息を呑み、その光景に釘付けになりました。

 黒い龍神様は、本物でした。顎や首が時折動くのを私はまんじりともせず凝視していました。

 気が付くと少女と少年の姿が見えません。先に鳥居をくぐり、その先の御社に向かったのかもしれません。

 鳥居の手前の右手に、きらきらと白い光に照らされた手水舎があります。

 私も清めてからお参りしよう。

 そう思い、手水舎に向かったところで目が覚めました。

 この話を、私より霊感のある息子に話してみたんです。

 息子が言うには、鳥居に巻き付いていた二柱の黒い龍神様は、恐らく私の守護霊様だろうとのことでした。

 少女と少年は私に憑いて来たのだが、黒龍神様の力で成仏したのだと思う――だそうです。

 その神社、実はイメージの重なる実在のものが二社あるんです。

 余り特定されてもどうかと思いますので、ふんわりと触れておきます。一社は、私が勝手にマイ神社にしているところで、住宅街の中にあるこじんまりとした神社なのですが、ここを訪れると精神が浄化されるのが分かります。鳥居をくぐると、はっきりと空気が変わるんですよ。

 社の奥に小さな滝があるんですが、ここで何年か前に白蛇様とご対面した事があります。

 もう一社は民家からは離れた場所にあるんですが、鳥居の位置と手水舎の位置が微妙に夢の構図と似ており、 おまけに近くには黒龍神のオブジェがあります。

 偶然にしては、出来過ぎている。そう、思いませんか?

 まあ、私の勝手な思い込みかもれませんけど。


 

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