第55話 ツンデレ娘VSハイテク爺
タナケン達がクロを回収している間、騎士団の官舎では激戦が繰り広げられていた。
「くらえ、アイリ! これがサイボーグ化した私の力だ!」
「またミサイルっ!?」
メカセバスチャンはハッキングしたドローンから次々とミサイルを飛ばし、アイリを襲う。
ドッカーーーン!!!
「フン、ハイテクの力の前には無力だったな」
「あわわ……死んじゃったでござる……」
騎士団達はただ傍観するしかない。彼らはドローンがなければ無力だから戦意喪失したまま見ていることしかできないのだ。税金から給料が出ているというのに役に立たない連中なのである(ボロクソ)
しかし、セバスチャンの背後に迫る影があった。
「なっ!!!???」
セバスチャンはサイボーグ化した耳、『セバスチャン・ハイテク・イヤー』で足音をキャッチし、すぐに振り返る。
「あんな攻撃に当たるわけないでしょ!」
そこには剣を構えて突進してくるアイリの姿があった。
セバスチャンは動揺しつつも、咄嗟の判断で距離を取ろうとする。どうにかアイリの方へ体を向き、地面を蹴って後ろへ逃げる。背中が割れて、移動用ジェット装置『セバスチャン・ハイテク・ブースター』が姿を見せ、ブースターを吹かせようとした。
だが、既にアイリの待つ剣の間合いに入ってしまっていた。サイボーグ化した脳『セバスチャン・ハイテク・コンピューター』でシュミレーションした結果、ブースターが点火する前に斬られてしまうことが判明。すぐに右腕をガトリングに変形させ、鉄の塊として剣を受け止めようとした。
スパッ!!!!! ドカン!!!!!
ガトリングと化した右腕はパンを切るように真っ二つにされてしまい、爆散した。
「なっ!!?? セバスチャン・ハイテク・ガトリング砲が真っ二つだと!!?? しかもギコギコせず、一刀両断とは!!??」
どうにかブースターを点火させたことで、空中へ避難することはできた。しかし、あっという間に右腕を破壊されてしまったことにセバスチャンは焦りを抱く。
「空中に逃げるんじゃないわよ!」
「逃げなかったらセバス/チャンになっていただろ!? なんだ、その切れ味と移動速度は!?」
「教えるわけないじゃない」
剣術系スキルと移動速度を上げるスキルを使用していることはセバスチャンも理解していたが、それでも信じられなかった。セバスチャン・ハイテク・ガトリング砲はおもちゃ屋で売っている超⚪︎金シリーズのロボットより少しだけ頑丈な素材が使われていた。それを紙を切るように真っ二つにしてしまったのだ。サイボーグ化したメリットの一つである頑丈さという売りポイントが否定されてしまったのは、セバスチャンとして精神的なダメージが大きかった。
「早く降りてきなさい! 負けを認めてドローンのハッキングを解くなら騎士団に引き渡すだけで許してあげるから」
「わ、私はまだ負けていない!!!」
激おこぷんぷん丸になったセバスチャンは次々とドローンでアイリを攻撃する。本当は勇者を相手にする際にミサイルを残しておく予定であったが、激おこぷんぷん丸状態なため、残弾など気にせずにミサイルを撃ちまくった。
「往生際が悪いわよ!」
「ぐぅ……!」
けれど、アイリは次々とミサイルをかわす。一発、また一発とミサイルを無駄にしていく。セバスチャンに焦りが募る。
「ぐぬぬ……もうミサイルの残弾がない……! こうなったら!!!」
セバスチャンはドローン本体をアイリに向けて飛ばす。
「無駄よ! ミサイルより遅い攻撃なんて当たるわけないじゃない!」
余裕で避けるアイリはそのまま剣を構える。
「これでおしまい!」
アイリが剣を振った瞬間、衝撃波が発生した。衝撃波は広範囲に空へ広がり、上空に逃げていたセバスチャンとドローンに対する全体攻撃と化した。
「ぐあああああっ!!!!!」
セバスチャンは断末魔をあげる。ドローンは次々と煙をあげながら墜落し、セバスチャン・ハイテク・ブースターも衝撃波によって故障。セバスチャンは断末魔をあげながら地面に落下した。
「ぎゃふん!!!」
「観念しなさい。もう逃げられないんだから」
「ぐぬぬ……」
セバスチャンはガトリング砲、ブースター、ドローンを失っただけでなく、落下の衝撃でボディにも大きなダメージを負っていた。火花がパチパチと出ていて、今にも爆発しそうである。
しかし、セバスチャンは諦めていなかった。左腕は人間の手をしているが、こちらも変形することで武器になる改造を施されていた。左腕は『セバスチャン・ハイテク・ビームセイバー』に変形することができ、まだ僅かながら逆転が可能だった。
だが、肝心なアイリはビームセイバーの間合いの外にいる。さらに落下の衝撃で『セバスチャン・ハイテク・足』が故障してしまい、歩くことができない。この状態で再び衝撃波を撃たれたら今度こそ終わりである。
セバスチャンは考える。どうにかしてアイリをビームセイバーの間合いまで近づかせることに。セバスチャン・ハイテク・コンピューターで何万回とシミュレーションを繰り返し、答えを導き出そうとした。
「ふふふ……」
「? なに笑っているの?」
「まだ私は負けていない」
「強がりはやめなさい。もう勝負はついているわ」
「強がりではない。私は知っているのだ。お前の秘密を!」
「私の秘密……?」
アイリは首を傾げる。秘密に心当たりはなかったし、そもそも秘密を知っていたところで、この戦況をひっくり返せるわけではない。セバスチャンの意図が読まないのだ。
「アイリ……お前は……」
「な、なによ?」
「毎晩、クマのぬいぐるみを抱いて寝ている!!!」
「なっ!!!!」
アイリは絶句した。図星だったからだ。タナケンキャッスル時代(第29話)に買ったクマのぬいぐるみを毎晩抱いて寝ており、クロに「アイリ、ぬいぐるみがないと寝れないの〜?」と小馬鹿にされている(クロは小馬鹿にしている気ない)ことを気にしていたのだ。
「なんで貴方がそのことを知っているのよ!!!!!」
「さらにクマのぬいぐるみに『クーちゃん』と名付けているのも知っている……」
「!? な、な、な、なんでそんなことまで!!!???」
アイリはクマのぬいぐるみに『クーちゃん』と名付けていた。タナケンやクロがいないことを確認して、たまにぬいぐるみに呼びかけていたのだ。
ちなみにセバスチャンがなぜ知っているかと言うと、タナケンキャッスル時代にスパイとして送り込んでいたキャサリンから教えてもらった情報である。キャサリンはメイドリーダーの立場を利用して、アイリの部屋にも監視カメラを設置しまくっていたのだ。
「あんなに剣術スキル凄いのに子供っぽいところであるんでござるな……w」
「ちょっと騎士団! わ、笑うんじゃないわよ!」
アイリは顔を真っ赤にさせながら動揺する。
「まだあるぞ。夜、真っ暗だと怖くて寝れないから豆電球をつけていることも」
「ちょ、ちょっと!」
「図星だったみたいでござるな……w」
「だから笑わないでよ!」
ついにアイリは両手をブンブンさせながら怒りだす。余裕がなくなってきたのである。
「他にもあるぞ。これ以上言われたくなければ私の口を塞ぐことだな」
「くっ……!」
そう、セバスチャンは口を塞ぎにきたアイリをビームセイバーで斬るのが狙いである。
「ふふふ、次はアレにしよう!」
「ま、待って!」
アイリはセバスチャンに向かって走り出す。セバスチャンは勝ちを確信した。そしてダメ押しとして、もう一つ暴露する。
「貴様はタナケンのことが好k……」
セバスチャンがそう言いかけたときだった。
「あーーーー!!!!! もう黙りなさい!!!!!!」
アイリは思いっきり剣を振り、特大の衝撃波を発生させた。
「え? ま、待て!!!」
慌てるセバスチャンだったが逃げることもできず、そのまま衝撃波に飲み込まれて遥か遠くまで吹っ飛ばされてしまった。
「はぁ……はぁ……危なかったわ」
「最後、あのサイボーグジジィはなにを言おうとしたんでござるか???」
「うるさい! なんでもいいでしょ!」
「こ、こえ〜でござる……」
アイリは騎士団を怒鳴りつけ、「ここで聞いたことは忘れるのよ???」と念入りに脅してからタナケン達のあとを追った。
アイリVSメカセバスチャン、勝者はアイリ!
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〜爺さんの家〜
「ふわぁ……外が騒がしいなー」
起床したクロはあくびをして、布団から抜け出す。
「タナケン、アイリ、爺さん、ウサ太郎ー! おなかすいたー!」
クロは部屋を叫んでみるが、返事はなかった。
「みんな、どこか行っちゃったのかな」
クロは仕方ないので、台所の床収納に隠されていた【ファイナルヘソクリパート2】を持って、買い物に出かけることにした。
『緊急事態発生! 魔王の軍勢が攻めてきています! 直ちに避難してください!』
「緊急事態って美味しいのかな?」
クロは避難して誰もいなくなった街を一人で歩く。
偶然辿り着いたコンビニには誰もいなかった。既にみんな避難していたのだ。クロはお菓子売り場に並んでいたプレミアムチョコ棒を全てポケットに入れて、店員のいないレジに【ファイナルヘソクリパート2】を置いて店を出た。
「ムシャムシャ、やっぱりプレミアムチョコ棒はデリシャスだね〜……ん?」
「やっと見つけた……!」
コンビニから出てきたクロを待ち受けていたのは――キャサリンだった。
キャサリンの後ろには無数の大型モンスターが街を破壊していた。彼女は魔王軍の補佐として大型モンスターを引き連れていたのだ。
「ムシャムシャ(咀嚼音)」
「食いしん坊ガール、お前だけはぜってーに許さねーからな!」
キャサリンはサバイバルナイフらしきものを取り出し、クロを睨みつける。
次回!!!!! クロVSキャサリン&モンスター達!!!!!!!
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その頃、タナケン達は――
「わしはな、【ファイナルヘソクリパート2】を回収したら故郷に帰ってのんびりしようと思うんじゃよ」
「へぇ(´・ω・`)」
また爺さんが泣き出すフラグを立てていた。
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