第54話 騎士団出動!

 レストランでの激闘から一週間が経った。


「きょ、今日こそは騎士団の官舎に……はうっ!!Σ(´;ω;`)」


 俺達はキノコスープによる腹痛に襲われていた。


「ま、まだ無理じゃ。くっ、美味しそうなキノコに見えたんじゃがな……」


「調理する前のキノコを見ていなかったけど、どんなキノコだったの?(´;ω;`)」


「真っ赤なキノコでの……紫色のドクロマークの柄が無数にあったんじゃよ」


「どう考えても毒キノコじゃねーか!!!!……はうっ!!(´;ω;`)」


 とてもじゃないが外に出られる状態ではない。アイリとウサ太郎はずっと寝込んでいるし。


「ふわぁ〜、おなかすいた」


 あくびをしながら起きてきたクロは、相変わらず呑気なことを言っている。


「起きてきたな、食いしん坊ガール! もう食べるもんなんてないわい! というかなんで一番多く食べていたお前さんはなんともなっていないんじゃ! ……はうっ!!」


「なにかないかな?」


 クロは爺さんの発言を無視して戸棚に隠してあったプレミアムチョコ棒をムシャムシャと食べ始めた。


「わ、わしの隠していたおやつがーーー!!!」


「また爺さん、泣いちゃったよ(´・ω・`)」


「ムシャムシャ(咀嚼音)」


 しかし、このままではまずい。早くシャルに知らせなくてはいけないのに……しかし、これでは魔王が攻めてくる以前に俺達が餓死してしまう。


「くっ、どうにかして騎士団の官舎に行かなくては……はうっ!!」


「安静にしておくのじゃ!! お腹ピーピーが治るまで堪えるのじゃ!! ……はうっ!!」


「もう食べるものなさそうだし、寝ようかな。すやすや(寝息)」


 俺の心配をよそにクロはまた寝てしまった。


「クロは呑気だな(´・ω・`)」


「とはいえ、今のわしらにできるのは寝て治すことぐらいじゃ。考えても仕方ないし、寝るかの」


「ぐぬぬ……( `ᾥ´ ;)」


 スヤァ…( ˘ω˘ )( ˘ω˘ )( ˘ω˘ )( ˘ω˘ )(∪ ˘ ᾥ ˘ ∪)


 ※左からタナケン、クロ、アイリ、爺さん、ウサ太郎



 ********************************



 〜後日、騎士団の官舎前〜


「いやー、今日も平和だな」


「そりゃそうだ。今の勇者様が就任してから世界は平和になりつつある。もう俺ら騎士団の出番なんてないだろw」


「ただ突っ立っているだけで給料出るもんな。勇者サマサマだぜ! ……ん? なんだ、変な男とツンデレっぽい少女とジジィとガントバシウサギが猛ダッシュで向かってくるぞ!?」


「たたたたたた、大変だァーーー!!!( `ᾥ´ ;)」


「どどどどどど、どうなされたのですかっ!?」


「魔王が攻めてくる……ゼェゼェ……( `ᾥ´ ;)」


「な、なんだってー!? それは本当ですか!?」


「全て本当だ! 魔王は軍を引き連れて侵攻してくる!( `ᾥ´ ;)」


「そんな馬鹿な!?」


「俺はシャルの知り合いだ! シャルを出してくれ!( `ᾥ´ ;)」


「勇者でしたら数時間前に魔王討伐の旅に出ましたよ」


「……え?( `ᾥ´ ;)」


「ですから勇者はもう旅に出てしまいましたって」


「いやいや、しばらくはここに滞在するって( `ᾥ´ ;)」


「え? まぁ、思ったより長く滞在されていましたね。というかさっきの魔王が攻めてくるって本当なんですか?」


「本当だって! 実際にダークマターと名乗る魔王に襲われて聞いたんだ! 早くしないと街がとんでもないことになる!( `ᾥ´ ;)」


「はぁ……そのダークマタタビ? とかいう魔王にはいつ襲われたんですか?」


「……半年前( `ᾥ´ ;)」


「へ?」


「半年前です( `ᾥ´ ;)」


「いやいや! 襲われてから通報まで遅すぎだろ! なんで今頃になって通報するんだよ!」


「……キノコスープでお腹壊しちゃって、そんで治ったんだけど、しばらく食事していなかったから爺さんの奢りで高級レストラン行って完治祝いしたんだ。そしたら今度は食中毒になって、高級レストランのオーナーと裁判して、弁護士や証拠になりそうなものを探している間にダークマターのこと忘れちゃってさ。そんで今さっき判決出て無事に勝訴だったんだけど、ホッとしたらダークマターのこと思い出したから通報しに来たの(´;ω;`)」


「なんで忘れるんだよ! キノコスープで腹壊したのはまだいいとして、完治祝いしている場合じゃねーだろ!」


「……ごもっともです(´;ω;`)」←反省する主人公


 俺は騎士団にめちゃんこ怒られた。


「魔王より裁判の方が大事じゃ! あのインチキレストランめ、わしの【ファイナルヘソクリ】で払ったというのに食中毒なんて許すわけないじゃろ! お主達も慰謝料をたんまり貰えたわけだし、よかったじゃろ!」


「ピギィー! ピギィー!」


 土下座している俺の後ろで爺さんとウサ太郎が騒いでいる。裁判で慰謝料を稼げたのは確かに大きかった。あとで家電量販店に行ってソシャゲ用のタブレットを買ってもいいかもしれない。


 ちなみにクロは爺さんの家でお留守番している。高級レストランのときもクロだけ食中毒にならなかったから、裁判で高級レストランのオーナーが「あいつらは仮病だ! そもそも賞味期限が15年過ぎていたぐらいで食中毒になるわけない!」などと主張してきた。何事もなかったクロを連れていったら裁判官に誤解されてしまいそうだったから、今日は留守番してもらった。


「とりあえず、次の騎士団の会議で話しておくから、もうアンタら帰っていいぞ」


「待ってください! 今すぐ対策を立ててください! 本当に魔王達が攻めてくるんです!(´;ω;`)」


「いや、いくらなんでも裁判やっていたからって忘れるわけないでしょ? 話も嘘くさいし、俺達を揶揄っているんだべ? そういうの困るんだよな、騎士団も暇じゃな……」


 騎士団がアホくさと言いながら官舎に戻ろうとしたとき、警報が鳴り響いた。


『緊急事態発生! 魔王の軍勢が攻めてきた! 住民はすぐに避難を! 騎士団は即座に出撃せよ!』


 街のあらゆるところで警報が鳴り響き、避難勧告のアナウンスが流れる。


「なっ!? 本当だったのか!?」


「くっ! お前達がグズグズしているから魔王軍が来ちゃったじゃねーか!( `ᾥ´ ;)」


「いや、グズグズしていたのは通報に半年かかったお前達だろ!」


「なんだと!?Σ( `ᾥ´ #)」←図星な主人公


「えぇい! とにかくあとは騎士団に任せて、お前達はさっさと避難しろ!」


 官舎から騎士団が一斉に出てくる。街を守るため、鎧を纏った彼らは……って鎧もないし、武器も持っていないぞ?(´・ω・`)



「ドゥフフw ようやく拙者達の出番でござるなw」


「この日を待ち侘びていたでござるよw」


「皆のもの! 準備はいいでござるか!w」


 出てくるのはチェック柄のシャツを着た丸メガネをかけた30〜40代ぐらいのおっさん達だった。


「……このオタクっぽい人達は一体???( `ᾥ´ ;)」


「見ればわかるだろ、騎士団だよ」


「……いや、鎧とか着ていないし、剣や槍とか武器も持ってなくね???( `ᾥ´ ;)」


「剣? 槍? 鎧? なに言っているんだ、俺達の武器はこれよ!」


 そう言って、取り出したのはプ⚪︎ステのコントローラーとVRゴーグルだった。他の騎士団もVRゴーグルをかけてコントローラーを取り出す。


「全員揃ったな!? 騎士団、出撃だ!!」


 その掛け声と同時に官舎から無数のドローンが飛び立った。


「あのドローンは?( `ᾥ´ ;)」


「爆撃用ドローンだよ。俺達、騎士団はアレでモンスターと戦うのさ」


「……剣や槍とかスキル使って戦うんじゃないの!?Σ( `ᾥ´ ;)」


「はぁ? なに言っているんだよ? ドローンがある時代になんで剣や槍で戦わなくちゃいけないんだよ、効率悪いだろ」


「でも、ここ異世界だし、この作品も一応異世界ファンタジーとしてやらせてもらって……いや、もう戦ってくれるのならなんでもいいか( `ᾥ´ ;)」←諦めた主人公


 飛び立つ無数のドローンと、そこらへんで「おらっ! くらえっ!」とVRゴーグルをつけながらブツブツ言っている騎士団達。なかなかシュールな絵面だ(´・ω・`)


「ふむ、勇者はおらんかったが超ハイテク戦術な騎士団がいれば大丈夫じゃろう。わしらは近くの体育館に避難しておこう」


「この世界、体育館あるんだ(´・ω・`)」


「ちょっと待って! クロはどうするの!?」


「あ、忘れていた(´・ω・`)」


 爺さんの家に置いてきたクロを回収しなくてはならない。やれやれ、世話のかかる食いしん坊ガールだぜ。


「!? コントロールが効かないでござる!!??」


「ん?(´・ω・`)」


「拙者のドローンも操縦不能になったでござる!」


「言うことをきけ! 煉獄機獣ブラッディオメガ零式(ドローンの名前)!」


 騎士団の様子がおかしい。VRゴーグルをつけていても一目でわかる程度にはパニック状態になっている。


「こちらに向かってくる物体はなにかのぉ?」


 爺さんの視線の先には、今さっき飛び立ったドローンがこちらに戻ってきていた。


「ねぇ、騎士団さん達。なんで戻ってきているの?(´・ω・`)」


「知らないでござる! 拙者達の操縦を受け付けないんでござる! コントローラーの無線は3本立っているのに!」


「ほへー(´・ω・`)」


 あたふたしている間に俺達の上空には無数のドローンが飛び交う。


「!! タナケン、危ない!」


「ぎゃっ!(´・ω・`)」


 アイリに突き飛ばされ、15mぐらい先まで吹っ飛ばされる。


 ドッカーーーン!!!!!


 振り返ると、俺が立っていた場所で爆発によって粉々に吹き飛んでいた。どうやらドローンに搭載されたミサイルが飛んできたようだった。


「タナケン、大丈夫!?」


「あ、ああ! アイリ助かった! ……おい、騎士団! なんで俺に向かってミサイル飛ばしているねん! ボケェ!(´;ω;`)」


「違うでござる! 拙者達はなにもしていないでござる!」


「そんなわけねーだろ! 今度はお前達から慰謝料取るぞ!(´;ω;`)」


 逆に脅迫罪で訴えられても仕方ないレベルの暴言を吐いていると、官舎の屋上から声がした。


「はははは! ミサイルを撃ったのは私だ!」


 官舎の屋上に立っていたのは、セバスチャンだった。


「よっこらせ!」


 ドッスン!!!!


 屋上から飛び降りたセバスチャンはサイボーグ化したボディなこともあって、凄い音を立てて着地した。あと砂埃もすごい、ごほっ! ごほっ!(´;ω;`)


「貴様らのドローンは全てハッキングさせてもらった! これがサイボーグ化した際に装備したセバスチャンレーダーの力だ!」


「な、なんだってーーー!?(´・ω・;`)」


 ドローン、ハッキング……超本格異世界ファンタジー作品である本作として、これらのハイテク単語が出てくるのは大変遺憾ではあるが、高度な技術戦によって俺達は追い詰められてしまったようだ(´;ω;`)


「うぅ……降参でござる」


「命だけはとらないでほしいでござる……」


「騎士団さん達!?Σ(´・ω・;`)」


「安心しろ、お前達はダークマター様の忠実なしもべとして生かしておいてやる」


「ありがたき幸せでござる〜!!!」×100ぐらい


「騎士団さん達!?Σ(´;ω;`)」


「ただし、タナケン! 貴様は別だ! 死ね!」


「えぇっ!?Σ(´;ω;`)」


 上空を飛んでいるドローンからミサイルが飛んでくる。この世界に来て何度目かわからない人生オワタな展開だ(´;ω;`)


 ドッカーーーン!!!!!


「あ、あれ? 生きているぞ?(´;ω;`)」


「タナケン! 下がっていて!」


 俺の前にはアイリが立っていた。彼女の手に持っている剣(割と良い値段した)はセバスチャンに向けられている。


「ほう、アイリ。このメカセバスチャンに戦いを挑む気か?」


「このままタナケンをやらせるわけないでしょ!」


「む、無理だ! アイリ! ドローンをハッキングしたセバスチャンを相手するのは危険すぎる!(´;ω;`)」


「それでも戦うしかないでしょ! それに魔王軍は来ているのよ!? タナケンは早くクロを回収してきて!」


「一人で戦うつもりか!? それはダメだ! 俺も戦う!( `ᾥ´ )」


「足手纏いだからいい! タナケンはクロを回収して!」


「ガビーン( `ᾥ´ )」


 俺が落ち込んでいると、爺さんに腕を引っ張られた。


「なにしておる! タナケン、行くぞぃ!」


「爺さん……でもアイリだけ戦わせるわけには」


「彼女の覚悟を無駄にするでない! 早くわしの家に戻って食いしん坊ガールを回収するのじゃ! あとわしの家にある【ファイナルヘソクリパート2】も回収するのじゃ!」


「いや、どう考えても後者が目的だよね……って爺さん! 引っ張るな!(´;ω;`)」


 爺さんの凄まじい力に引っ張られる俺はどんどんアイリから離されていく。


「待て、タナケン! 逃さんぞ!」


 再びドローンからミサイルが飛んでくる。


「させないわ!」


 しかし、アイリの放った斬撃でミサイルは空中で爆散した。


「仕方あるまい。アイリ、貴様から死んでもらおう」


「わたしは死ぬ気なんてないわ」


 こうしてアイリとメカセバスチャンの死闘が始まった。



 ……爺さん! 痛い! 腕ちぎれる!(´;ω;`)←引っ張られる主人公

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