第51話 トリプルナイン

「……アイリ! 逃げるぞ!( `ᾥ´ )」


「逃げても家がバレているのよ!?」


「そうだった! ゴルバグ市役所の清掃バイトの履歴書に住所書いていた!Σ( `ᾥ´ ;)」


「そもそも逃すわけねぇだろ! 死ね!」


「ひぃ!!!(´;ω;`)」


 キャサリンがサバイバルナイフ数本をポイポイと投げてくる。本気で殺す気だ!


「タナケン!」


「邪魔はさせんぞ。まずはお前から始末してやろう」


 俺を助けようとしたアイリの前にセバスチャンが立ちはだかる。


「セバスチャン! そこをどいて!」


「フッ、もはや今の私はセバスチャンではない。"メカセバスチャン"と呼んでもらおう!」


 セバスチャンは両腕をガトリングに変形させ、怒涛の銃声が鳴った。


「っ……!」


 アイリはいつの間にか習得していた移動速度アップ系スキルでなんとか弾を避けている。


「アイリ! 今助けに……ぎゃあ!(´;ω;`)」


 サバイバルナイフが俺の頬をかすめた。血が出ている! 痛い! 素直に痛い!(´;ω;`)


「待て、キャサリン! 私がトドメを刺す!」


「うるせー! ジジィはそっちの小娘を始末しろ!」


 仲間割れしている今しかない!(´;ω;`)


 俺は寝ているクロを激しく揺さぶり、ドカ食い気絶スキル(レベル5)のスキル玉を取り出す。


「くらえ! スキル玉閃光(※)!(´;ω;`)」


 ※いつものスキル玉の眩しさによる目眩まし。名前は今考えた模様。


「ちぃ!」


 あまりの眩しさに目を瞑るキャサリン。その隙に俺はアイリを助けにいく。


「くらえ! セバスチャン! タナケンソード!(ハンバーグを切ったナイフ)」


 叫びながらスキル玉をセバスチャンに投げつけて、ハンバーグを切ったナイフでガトリングを壊そうとした。


「甘い!」


「なっ!?(´・ω・;`)」


 セバスチャンは素手でナイフを止めた。手が機械になっているから素手と呼んでいいのかわからんけど。


「目もセンサーアイとなっているのだ! 目眩しなど通用せん!」


「ぎゃあ!(´;ω;`)」


 俺はセバスチャンに突き飛ばされて尻餅をついた。


「ちょっと! タナケン!? 大丈夫!? どうなっているの!?」


 アイリもスキル玉閃光の被害者となっており、目を瞑っていて状況を確認できていないようだ。というか俺も眩しくて、よく見えていない(´>ω<`)


 ん? 今、セバスチャンがアイリの方に近づいていたような(´>ω<;`)


「きゃっ!」


「アイリ! どうした!?(´>ω<;`)」


 スキル玉をクロの体内に戻して、目を開ける。


「アイリ!!!!!(´;ω;`)」


 地面に倒れているアイリを見て、声をあげる。セバスチャンにやられたのか、俺が呼びかけても動かない。


「セバスチャン! アイリになにをした!?」


「メカセバスチャンだ。安心しろ、気を失っているだけだ」


 生きているのならよかった……ってキャサリンはどこに?(´・ω・`)


「おら! 死ね!」


 ドン!


「ぐはっ!(´;ω;`)」


 後ろからキャサリンに体当たりされてうつ伏せで倒れる俺。そのまま背中にキャサリンが飛び乗ってきて、サバイバルナイフを首元に押しつけられる。


「なに安心してんだよ! 今からアンタ達は全員死ぬんだよ!」


「ひぃ!(´;ω;`)」


 人生オワタ!!! と脳内でヤケクソになっていると店の奥から声がした。


「待て、まだ殺すな」


 店の奥から出てきたのは、杖をついた怪しげな爺さんだった。和服を着た75歳くらいの盆栽を趣味としていそうな爺さんだ(´・ω・`)←偏見


「「ダークマター様!」」


 あれほどノリノリだったキャサリンとセバスチャンの腰が低くなる。どうやら爺さんが黒幕らしい。


「誰だ! 最近の過去キャラ再登場ラッシュ的に以前会ったことあるキャラか!?(´・ω・`)」


「いや、新キャラのダークマターだ」


 ダークマターという厨二病がつけそうなあだ名を使ってたら爺さんはコツコツと杖をつきながら、キャサリンに押さえつけられている俺の前に立った。


「どうして俺達を殺そうとする!? 家に帰らせろ!(´;ω;`)」


「それはできない。お前達はここで死んでもらう」


 ダークマターは見た目はおいぼれた爺さんだが、その目は鷹のように鋭く、俺はチワワみたいなつぶらな瞳をしながら震えていた。


「貴様だな? スキル資産家として活動しているのは」


「初めて資産家扱いされた(´・ω・`)」


「殺す前に訊いておきたい。貴様と勇者はどういう関係だ?」


「その前に一つ言わせてもらうぜ。なぜ俺とシャルの関係性を訊いてくる? あと殺さないでください(´;ω;`)」


「なぜ訊いてくる、か。いいだろう、冥土の土産に教えてやろう」


「俺達が死ぬのは確定なんスね(´;ω;`)」


「もう三年前になる。あの小娘が勇者になった途端、我らの同胞が次々と破れていった」


「小娘ってシャルのことか! というか同胞って爺さんはモンスターなのか!?(´;ω;`)」


「うむ。わしは古の魔王であり、再びモンスター達の世界を作り上げる救世主だ」


 ダークマターはそう言い、口から牙が、頭から角みたいなものが生えた。どうやら魔王系のモンスターが人間に化けているようだ。


「わしだけではない。キャサリンはサキュバス系モンスターで人間に化けておる。このレストランも人間に化けたモンスターが経営しており、営業利益は魔王城の建設費などに使われているのだ」


「な、なんだってーーー!? でもセバスチャンは人間だろ!?Σ(´・ω・;`)」


「セバスチャンはサイボーグ化しているから機械系モンスターということにしてある」


「どういう基準なんだ……(´・ω・;`)」


 ダークマターはコホンと咳払いをして、話を続ける。


「あの小娘はお前達からすれば英雄だが、我々からしたら悪魔だ。それまで我々が世界のほとんどを占領していたというのに……あの憎き小娘が勇者になって三年で、我らは領土の99.9%を失った……」


 シャル、めっちゃ健闘していますやん!(´へωへ`)←身内が活躍していて嬉しい主人公


「我々は不思議に思った。あの小娘は何故あそこまで強いのか」


 ダークマターは俺の顔を見て、若干悲しそうな顔をする。


「過去にもそれなりに厄介な人間はいた。貴様らがおでんツンツン勇者と呼んでいた女、あやつの結界スキルのせいで世界征服を達成できなかった」


「ほへー、おでんツンツン勇者って、やっぱり凄かったんだなー(´・ω・`)」


「それでも人間側が領土を取り戻すとは誰も想像していなかった。結界内に人間どもを閉じ込めていると楽観的に考えていた魔王もいたほどだ」


 昔はそこら辺にいるモンスターも凶暴だったからね(・ω・`)


「しかし、あの小娘は違う。今までとは次元の違う強さ……そう、神話に出てくる"トリプルナイン"スキルを使っているとしか思えないのだ」


「トリプルナイン???(´・ω・`)」


「レベル5を遥かに超えた先にあるレベル999、神話の中に出てくる伝説のスキルのことだ。小娘が使っているスキルはそうとしか言いようのない強さを誇っている」


 レベル999ってトリプルナインと言うのかー(´・ω・`)←他人事な主人公


「トリプルナインは実在していたという記録も残されている。だが、いくら実在していたとしても、あんな小娘が習得できるような代物ではない。さらに言えば、小娘が使っているトリプルナインは一つではなく、複数個だ。そんな馬鹿なことがあってたまるか! スキルを貸している協力者がいるに違いない!」


 ダークマターはシャルの理不尽な強さにキレるように言う。めっちゃチートクラスのスキルだから仕方ないね(´・ω・`)←他人事2


「そこで我々は小娘に関する情報を募ったのだ。そしたらタナケンという人物が怪しい……とセバスチャンからタレコミがあったのだ」


「いや、またお前かよ! 何回タレコミしたら気が済むんだ!(´・ω・#`)」


 セバスチャンを睨むと、ヤツはあっかんべーをした。子供か(´・ω・#`)


「セバスチャンの情報によれば、貴様は小娘と同棲していただけではなく、モノシリ・デスの最期にも居合わせたようだな。小娘には家族がおらず、貴様以外に友人もいなかったという情報もある。トリプルナインを貸しているとしたら、貴様しかいないのだ」


 大体当たっているから困る( ≖ ᾥ ≖; )


「そこでわしはキャサリンをスパイとして、お前らのタナケンファミリーとかいうダサい名前の組織に送り込ませたのだ」


「ダサい言うな!( `ᾥ´# )」


「しかし、手柄はなかった。貴様もトリプルナインを習得できるような人間でもなく、ドラゴンに襲われて慌てふためくザコザコ人間であった、と」


「ムカー!( `ᾥ´# )」


「だが、小娘は貴様をドラゴンから救った。さらにそれだけではなく、密会もしていたそうだな」


「それがどうした!? それだけで俺がスキルを貸した人物だと思ったのか!? それだけで俺達を殺すのか!?( `ᾥ´# )」


「……我々も確信はない。だが可能性として貴様、タナコポンポンが一番怪しいのだ。だから殺す前にハッキリさせておきたいのだ」


「タナケンだよ! 流石に名前間違えすぎだろ!(´・ω・`)」


 しかし、厄介なことになった。向こうは確信がないとはいえ、俺がシャルにスキルを提供したことは当たっているのだ。


「勇者にトリプルナインを貸しているのは、貴様か?」


 ダークマターは見下すように、というか実際に地面に押さえつけられている俺を見下した。


「……お、教えねー!(´・ω・;`)」


「!? なんだと!?」


「教えねー! ぜってー教えねー!(´・ω・;`)」


 俺は何度も叫ぶ。遠回しに「俺を殺したら、真相は闇のままだぞ。ええんか? 俺を殺してええんか?」と叫ぶ。


「ならば仕方ない。キャサリン、やれ!」


「え、え、ええええええ!!!(´;ω;`)」


「よっしゃ! やっと殺せる! よくも私をメイドとして扱ってくれたな! このブタ!」


「ま、待って! 本当にいいのか!? もしかしたら俺がスキルを貸したのかもしれないんだぞ!?(((´;ω;`)))ジタバタ」


「数日後、この街に我らとは別のグループの魔王達が総攻撃をしかける」


「!?(´;ω;`)」


「血の気の多い奴らでな。玉砕覚悟のようだ。勝機もないのに馬鹿としか思えんが、それでも同胞であることには変わらない。だから僅かな可能性であっても、トリプルナインを貸している疑惑があれば殺さなくてはいけないのだ」


「いやいや!! そもそも俺を殺さないで人質として使えばいいじゃん!! そうすればシャルも攻撃を躊躇うかもしれないじゃん!!(´;ω;`)」←必死すぎる主人公


「その必要はない。もし貴様がスキルを貸している人物なのなら、我らの勝利が確定する」


「いや、俺を殺したってシャルに討伐されるだけぞ!? 俺とシャルはマブダチで、もし俺が殺されたと知ればシャルは激おこぷんぷん丸になるんだぞ!?(´;ω;`)」


「貴様がトリプルナインを貸しているのなら、そうはならん」


「ほへ?(´;ω;`)」


「トリプルナインは普通のスキルとは違う。トリプルナインには意思があり、貸していても本来の持ち主を忘れない。要するに本来の持ち主が死ねば、そのスキルは世界から消滅するのだ」


「消滅……? え、じゃあ俺が死ねばシャルは五大スキルを失うってこと!?(´;ω;`)」


「そうだ。スキルの頂点に立つトリプルナイン唯一の弱点と呼べるだろう。もっともトリプルナインを人に貸すようなお人好しなんて滅多にいないから、あってないような弱点なのだがな」


「ヤバい! 数日後に魔王達が総攻撃を仕掛けるんだろ!? 俺が死んだらシャルも街も全滅じゃねーか!(((´;ω;`)))ジタバタ」


「フン、やはり貴様が本来の持ち主だったか」


「あ……(´;ω;`)」


「どうやって手に入れたのか聞きたかったがタイムオーバーだ。死ね!」


 ダークマターの言葉と同時にキャサリンがサバイバルナイフを振り下ろす。


 俺の人生――オワタ!(´;ω;`)←二週連続ピンチオチ

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