第49話 ヤブ医者と寿司

「ハックション!!!!!(´>ω<`)」


 回想編を終えて、久しぶりの現代編である。最終章ということで気合いを入れていた俺だったが、風邪をひいてしまった(´;ω;`)


「へっくちょん!」


 ベッドの上で寝ているアイリも風邪でノックダウンしていた。


「うぅ……久しぶりの出番なのに……」


 アイリは悪魔にうなされているような声を出す。


「風邪をひいてしまったんだから仕方ないさ。そろそろ風邪薬を買いに出かけたクロが帰ってくる頃だから、さっさと飲んで治そう(´・ω・`)」


 それから7時間後――


「ただいまー、ムシャムシャ(咀嚼音)」


 クロが肉まんらしきものを食べながら帰ってきた。


「いや、おせーよ! おつかい頼んでおいてアレだけど、遅すぎるぞ!(´・ω・`)ノビシッ」


「おつかいってなんだっけ?」


「え? 風邪薬は?(´・ω・`)」


「風邪薬? 買っていないよ。タナケンが好きなの買ってきなって言ったから」


「いや、風邪薬を買ったお釣りで好きなの買ってきていいよって言ったんだよ! え? じゃあ、風邪薬ないの?(´・ω・`)」


「ないよ。ムシャムシャ(咀嚼音)」


「お釣りは?(´・ω・`)」


「お釣りってなに?」


「ダメだこりゃ(´;ω;`)」


 俺とアイリはさっきよりも具合が悪くなり、大きなため息をつきながら天井を見上げる。クロにおつかいを頼むのは100年早かったようだ。


「これ食べて元気出して」


 口にチョコ棒を突っ込まれて窒息しかける俺(´;ω;`)


「こうなったら病院に行くしかない……!(´;ω;`)」


 金はないがアイリも苦しそうだし、クロに移してしまったら大変である。当分は食費を削るためにそこら辺に生えている雑草が主食になるが、とにかく病院に行くべきだ。


「よし、アイリ行こう……!(´;ω;`)」


「……行かない」


「ほへ? ……あ、病院にかかる金を心配しているのか。大丈夫、マヨネーズが残っているからそこら辺に生えている雑草でも案外いけると思うぞ!」


「私は行かない!」


「えぇ……(´;ω;`)」


 アイリは布団を頭から被ってしまい、出てきそうにない。そんなにそこら辺に生えている雑草を食べたくないのか。


「アイリ、注射が怖いのー?」


 クロが布団に向かって話しかける。そんなわけないだろ、と思っているとガバッと布団からアイリが顔を出す。


「そ、そそそうじゃない! ぐ、具合が悪いから歩けないの!」


「……図星かい!(´;ω;`)ノビシッ」


 ********************************


「ふむ。風邪みたいな症状があるとな」


 俺とアイリは病院でヤブ医者に診てもらっていた。


 ヤブ医者は第25話に出てきた、はちみつを薬だと言い張ってきたぼったくり野郎だ。最近知ったことだが、医師免許を持っていないらしい。しかし、俺みたいな別世界からやってきた人間を診てくれるのは、このヤブ医者しかいないので我慢するしかない。


 ヤブ医者はレントゲンの写真を見ながら、眉間に皺を寄せる。ついでについてきたクロはチョコパイを食べながら呑気に寛いでいた。


「私は治った気がするわ……フラフラ」


「アイリ、注射が嫌だからって逆仮病しないの(´・ω・`)」


 帰ろうとするアイリを引き留めていると、ヤブ医者は口を開いた。


「これは風邪ではないのぉ。風邪と見せかけて人を殺す毒物の症状じゃ!」


「……(´・ω・`)」


「なんじゃ?」


「なにが毒物の症状だ! また金を毟り取ろうとして不安にさせようと嘘ついているんだろ!(´・ω・#`)」


「今回は嘘じゃないわい! レントゲンを見るのじゃ! 心臓のところにドクロマークが浮かび上がっておるじゃろ!?」


「うるせぇ! そもそも今日はレントゲン撮っていないだろ! 誰のレントゲンだよ、これ!(´・ω・#`)」


「このレントゲンはわしのやつじゃ! でも毒物に関しては嘘じゃないわい! なにか変なものを食べた記憶はないのか!?」


「変なもの……強いて言えば数日前から家の前に高そうな寿司が置いてあって、それを毎日食べていることぐらいしかないぞ(´・ω・`)」


「それじゃ!!!!! なんでそんな怪しいものを食べているのじゃ!!!!!」


「そこに寿司があったから(´・ω・`)」


「哲学的な回答はいらないのじゃ!!!!!」


 ヤブ医者は激おこぷんぷん丸になってしまい、叱られる俺(´;ω;`)


「この毒は本来はモンスターを倒すために使われているものじゃ。あと少しでも多く食べていたら死んでいたんだぞぃ!」


「ひょ、ひょえ〜!! そんなヤバい毒だったのか(´・ω・;`)」


「うむ。そこのさっきから食べカスを落としまくっている女の子(クロ)は食べていなかったから良かったのぉ」


「いや、クロが一番食べていたよ(´・ω・`)」


「そんなわけあるまい。お前さん達より食べていたら死んでいるわい」


「めっちゃ食べたよな、クロ(´・ω・`)」


「お寿司おいしかったー!」


「んなアホな!!!!!!」


 こうしてヤブ医者に「もう二度と怪しいものを食べるな!!!!!」と怒られ、相談料10万ゴールドをリ⚪︎払いしてタナケンハウスへ戻るのであった。


「結局、気合いで治せって言われて行った意味なかったな(´・ω・`)」


「コホコホ……注射する必要がなくてよかったわ」


「すやすや……」


 クロは診察室でお菓子を食べていたことで、ドカ食い気絶スキルが発動してしまい、俺の背中で寝ている。病人に背負わせるとはとんでもない子や(´・ω・`)


 フラフラになりながらタナケンハウスに戻ると、ドアの前に誰か立っていた。最初は家賃を回収しにきた大家さんかと思ってビビったけど、そうではないようだ。


「猛毒寿司を置いてから四日目、始末できたはず……ってきゃあ!?」


「驚いたのはこっちだ! 俺の家の前でなにしてんだ!(´・ω・`)」


 なにかブツブツ言っていた女は俺を見て驚き、そのまま尻餅をついた。


「って……キャサリンじゃん!(´・ω・`)」


 尻餅をついた女性をよく見ると、キャサリンだった。輝かしいタナケンキャッスルに住んでいた頃、タナケンファミリーNo.4としてメイドリーダーを勤めていた彼女である。


「あのとき(※)はよくも一人で逃げたな!(´・ω・#`)」


 ※タナケンキャッスルがドラゴンによって破壊されたとき


「い、いえ! 私はタナケン様の足を引っ張らないためにあえて立ち去ったのです! 私はタナケン様が窮地を乗り越えられると信じておりました!」


「……それならいいけど、俺に何の用?(´・ω・`)」


「え? あ、あー……流石に断りなく一人で逃げてしまったことを気にしていたので、お詫びとしてなにか食事を招待しようかなー……なんて思っていたところでした、はい」


 キャサリンは明らかに今思いついたことを口にしたような言い草であったが、ヤブ医者に金を取られていた俺は……。


「うおおおおお!!! タダ飯だ!!!(´へωへ`)」


 めっちゃ喜んだ。


 その声に寝ていたクロも目を覚ます。


「ハンバーグ! ハンバーグ食べたい!」


「な、なんなのこいつら……じゃなかった。えぇ、ハンバーグですね! もちろんご馳走しますよ!」


「うひょー!!!(´へωへ`)」


 食費が浮いた喜びで体内の毒を吹っ飛ばした俺と普段通りのクロと自力で治したアイリは一週間後、キャサリンに招待されたレストランに向かった。


 しかし、そのとき俺達はまだ知らなかった。


 これがキャサリンの罠であることを。


 俺達を消そうとしている組織のことを。


 世界に危機が迫っていることを。

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