第47話 サードエディション

「おうち帰るーーー!!!(´;ω;`)」


「タナケン! ダメだよ! 私達が魔王を倒さなきゃ!」


 泣き喚く俺、それを止めるシャル、熟睡する奴隷の子、気絶して口から泡を吹いているおでんツンツン勇者……もはや精神的にもモノシリ・デスを倒せる状況ではない。


「シャル、逃げよう! もう俺達じゃどうにもならない!(´;ω;`)」


「そんなことできないよ! 私達が倒さなきゃ街は滅ぶし、あそこのなんか遠くに見える丘で応援してくれている人達も死んじゃうんだよ!?」


「うっ……でも知らない人ばかりだし、あの人達が襲われている間に逃げた方が……(´;ω;`)」←主人公にあるまじき発言


「街の人達なんだよ!? 今までの思い出はどうしたの!?」


「……名前間違えられて、超ブラックバイトを紹介されて、家賃ぼったくられた思い出しかないよ(´;ω;`)」


 シャルは納得いかない顔で黙り込んでしまった。俺だってどうにかしたいが、スキル玉を取りに行けば確実に死んでしまう。ここは戦略的撤退しかないのだ。


「とにかくおでんツンツン勇者と爆睡ガールを連れて逃げよう(´;ω;`)」


「……取ってくる」


「ほへ?(´;ω;`)」


「私がスキル玉取ってくる!!!」


「ま、待て! 行っちゃダメだ!」


 シャルはスキル玉が落ちている湖の方へ走り出した。すぐに追いかけようとしたが、足がすくんで動けない。


「シャルー! 戻ってくるんだ!(´;ω;`)っ」


 ダメだ、シャルは止まらない。このままでは森を抜けて、湖に出たところを狙い撃ちされてしまう。なにか! なにか手はないのか!?


「おでんツンツン勇者さん! 起きて! シャルを助けて!(´;ω;`)っ」


「ぶくぶく……(口から泡を吹いている音)」


 おでんツンツン勇者は完全に戦意を喪失している。精神状態によって結界の性能が変わる的な話だったし、起こしたところで状況は変わらなさそうだ。


「くっ……! 他になにか手はないのか!?」


「すやすや……」


「ん?(´;ω;`)」


 俺はあることを思いつき、爆睡している奴隷の子を揺さぶった。


 ポンッ! ポンッ!


 奴隷の子からスキル玉二つが出てくる。ドカ食い気絶スキルのレベル1と2だ。五大スキルと比べたら光は弱いが、それでも光っていることには変わりない。


 勇気を振り絞り、スキル玉二つを持ってモノシリ・デスに向かって走り出す。シャルはスキル玉に向かって走っていてまだ森を抜けていない。こっちの方が早く森を抜けれる。


 そして、森を抜ける手前まで行き、モノシリ・デスを視界に捉えた。シャルとは結構離れてしまったが、ギリギリ彼女を視認できる距離。あと少しで彼女は森を抜ける。


 タナケン、自分を信じろ(´・ω・`)


 現実世界で仕事場のおばちゃんに言われた言葉を信じろ……!


『あら、タナキンさんって意外と筋肉あるのね』


『タナケンです! 毎日タンポポをのせていますからねw』


 そうだ、五大スキルがなくても俺にはタンポポを乗せ続けた経験があるのだ。今こそ力を発揮させるときなのだ。


「うおおおおおお!!!!!(´⚪︎ω⚪︎`)」←力を入れすぎて白目になる主人公


 俺はドカ食い気絶スキル(レベル1)のスキル玉をモノシリ・デスに向かって思いっきり投げた。東京ドーム何個分だったか忘れるほど巨大な魔王に届くほどの投手力を発揮した。


『む! なんだ!』


 俺の投げたスキル玉は即座にモノシリ・デスの周りに飛んでいた火の玉が迎撃し、爆散した。


「まだまだーー!!!(´⚪︎ω⚪︎`)」


 ドカ食い気絶スキル(レベル2)のスキル玉も投げる。それも即座に迎撃されて爆散してしまう。


 どうにかモノシリ・デスの注意を引きつけることに成功した。シャルはもう森から抜けている。でもスキル玉まで数十秒かかりそうだ。


「ちくしょーーー!!!卍(⚪︎ω⚪︎卍`)=ガサッ!」


 俺は森から抜け出して、その身をモノシリ・デスに晒した。両手を大きく回して存在をアピールするかのように。


『バカめ! 自分から出てくるとは!』


 すぐに火の玉が飛んでくる。俺は死を覚悟しながら逃げる。


「うおおおおーーー!!! あっ!卍(⚪︎ω⚪︎卍`)」


 小石につまづいてコケてしまう。だが、いい感じに姿勢が低くなったことで、一発目の火の玉をかわすことに成功した。


 しかし、起き上がる前に二発目の火の玉が飛んでくるのが見えた。


「やっぱりダメだー!!!(´;ω;`)」


 ドオオオオン!!!!!


 すさまじい爆音がした。


『グアアアア!!!!』


「ん?(´;ω;`)」


 俺の前には七色に光る結界が張られていた。モノシリ・デスの肩からジューシーな匂いが漂ってくる状況的にどうやら火の玉を跳ね返したようだ。


「ふふふ、危なかったわね。勇者は遅れてやってくるものよ(私がいながら一般人が死んだとか、また叩かれちゃうところだったわ)」


「おでんツンツン勇者さん!!!!!(´;ω;`)」


『おのれ、おでんツンツン娘め!!』


「うっ!」


 再びモノシリ・デスの精神攻撃という名の悪口によって、おでんツンツン勇者がぶっ倒れる。あと俺の前にあった結界も砕け散った。


「おでんツンツン勇者さん!!??(´;ω;`)」


『お前も死ね!!!!!』←ダイレクトな言い方


「うわあああああ!!!:(;゙゚'ω゚'):」


 逃げる間もなく、火の玉が目前まで迫っていた。


 ついに死を覚悟した。人生何度目かわからない覚悟である。目を瞑り、走馬灯(思い出す価値はない)が流れ、俺は死んだ。


 ……って死んでない!!!!!(´;ω;`)


「むぐぐ!!!!!(´;ω;`)」


 思いっきりシャルに抱きつかれていた。火の玉から俺を守るように抱きつき、シャルの背中に直撃した火の玉が跳ね返っていくのが見えた。あれだけ離れていた彼女がここにいる&火の玉を跳ね返したということは……(´;ω;`)


「タナケン! スキル持ってきたよ!」


「ぐるじい! いろいろ当たっている!(((´;ω;`)))ジタバタ」


 予想を遥かに超える抱擁力(誤字ではない)にいろんな意味で戸惑いつつも、五大スキルが戻ってきて形勢は逆転した。


「タナケン! 危ない!」


「ぎゃふん!(´;ω;`)」


 第六感が発動したのか、シャルが俺を突き飛ばした直後、火の玉が連続で飛んでくる。


 しかし、五大スキルを纏っているシャルには全く通じず、全て跳ね返る。俺は突き飛ばされたことにより、火の玉から逃れることはできたが、地面に顔からダイビングしてしまい、割と重症だ。


『なんだ!? そのデタラメな防御力は!?』


「ん? これは!!!(´・ω・`)」


 俺は落ちていた良い感じの木の枝を拾い、シャルに投げ渡す。


「シャル! 受け取れ、タナケンオリジナルつりざお(サードエディション)だ!(´・ω・`)」


「タナケン、ありがと!」


 シャルはキャッチして、そのままタナケンオリジナルつりざお(サードエディション)を構えた。


「これでおしまいだー!!!!!」


 そう叫んだシャルはタナケンオリジナルつりざお(サードエディション)を大きく振った。


 とてつもない大きさの衝撃波が複数発生して、モノシリ・デスに向かって飛んでいく。


『斬撃だと!? そんなの効かぬわっ!』


 モノシリ・デスは特大サイズの火の玉を50個ぐらい飛ばして迎撃してくる。


 けれど、シャルの放った衝撃波は火の玉を誕生日ケーキのローソクのように吹き飛ばし、そのままモノシリ・デスを木っ端微塵に切り裂いた。


『全知全能の魔王で……ある……この私が……』


「全知全能要素、なんもなかったけどね(´・ω・`)」


 こうしてモノシリ・デスは消滅し、おでんツンツン勇者の結界修復によって、今回の件は全て解決した。


 まー、街とかいろいろ壊れちゃったけど、終わりよければ全てよしということで(´・ω・`)←元凶


 ********************************


 それから数日後――勇者グランプリ決定戦が開かれた。

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